ノンスタ井上/吉本興業の正念場

2016.12.14

組織・人材

ノンスタ井上/吉本興業の正念場

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

報道ステーションの臨時ニュースでも知らされた、ノンスタイルの井上氏(現時点での呼称は容疑者かも知れませんが、まだ不明なので本文では氏と表記します)の事件は今、大きな岐路に立っています。厳しい状況であることは当然ですが、この先の対応は今正に正念場です。

1.謝罪の初動
事件事故の収拾のため、謝罪をいち早く行うことは有効です。ただし、何が何でも直ちに会見すれば良い訳ではなく、情報も錯綜し、法的な措置含めてまだ未確定定要素が多い中でもとにかく会見に臨んでしまうというのは危険です。会見しても提供できる情報がなければ当然さらなる反発を呼んでしまうからです。

少なくとも何が起こって、今どうなりつつあり、今後の見立てくらいの情報は最低そろえてからでないと、謝罪会見も成り立たないのです。しかし逆に会見などせずに逃げ回れば、今年多発したスキャンダル・炎上事件のように、今度はしつように追いかけられ、さらに批判は炎上し、ますます不利な環境になる可能性があります。

謝罪のタイミングはきわめて重要で、ここを見誤ったケースが今年はのきなみ炎上しました。逆にタイミングを上手く対応したことで、批判を鎮火できた例もあります。今年多発した浮気、不倫事件でも、三遊亭円楽さんやファンキー加藤さん、カールスモーキー石井さんに至っては、もはやそんな事件のあったことすら忘れられているのではないでしょうか。


2.真実と炎上
すぐに記者会見できない理由の一つに「捜査の成り行き」があります。もちろん法律上難しい線引きがあったり、被害補償が巨額になるなど、微妙な環境もあり得るでしょう。しかし今回の事件でいえば、被害者の方のけがはある程度わかったと報道されています。その原因が何であったかではなく、おそらく売れっ子タレントであり、巨大芸能プロダクションであれば十分負担できそうな被害にとどまっているようです。

そうであれば、時間を引き延ばすことはマイナスでしかありません。仮に捜査の結果、互いの不注意だったり、過失相殺が発生することがあったとしても、その事実判明を待たずに収拾に入る必要があります。ただし事件が実は飲酒運転だったり、重大な違法行為が今報道されている以外にもあったら話はまた別です。

炎上は法的な白黒によって起こるものではありません。批判感情が発火し、それが燃え広がりエスカレーションを呼ぶ過程で、もはや事実は飛び越えて、批判的感情がすべてを圧倒します。感情の奔流がもう止めようがなくなる状態を炎上状態と呼ぶと思います。この段階で真実を訴えても、もう聞く耳を持たれることはありません。


3.謝罪の役割
今年多発した謝罪の場面で、私のところにはさまざまな取材や相談をいただきました。中でも「炎上したらどうするか」というものは芸能人、著名人、企業などが常に抱えるリスクとして大きなものだと思います。しかし炎上してしまった炎を消すのは容易ではありません。現実のリスクコントロールは、とにかく炎上するリスクを減らすことに尽きます。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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