就職活動を再点検せよ

2016.06.07

組織・人材

就職活動を再点検せよ

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

一応公式の?就職・採用活動解禁で一気に内々定が出た人、まだまだこれからという人、さまざまな6/1を迎えています。どんな経済環境下でも順調に採用が進む人はいますが、割合からすればほとんどの学生はなかなか自分の思う通りに選考は進まないのです。そんな就活が思うように進まない人に、「就活再点検」のお勧めです。

・有名大学なのに面接がうまく行かない人
受験時偏差値ランクで、有名・一流と呼ばれる大学の学生なのに、面接で全滅、ESはほとんど通過するのに面接だと落とされるという人がいます。もちろん有名・一流といってもどこまでがそうで、自分の大学はそれなのかどうかヤキモキする人もいるでしょう。もうその時点で考え方が間違っています。

「有名・一流大学生」だから採用するのではありません。会社で仕事が出来そうだから採用するのです。偏差値の高い大学ほど、事務処理や受験のような長期的目標達成能力が高い「可能性」があるのですから、この判断や評価は一定の説得力を持ちます。人としての本当に一流、優秀かどうかはわからずとも、有名・一流大学に所属していることが不利になるはずがありません。

しかしそうした学生だけが採用されるのであれば、企業は何千万円もの採用コストなどかけずに、大学の偏差値序列で順に採用すれば良いのです。もちろんそんなことは不可能だし意味のないことを企業はわかっています。だから手間と予算をかけてわざわざ説明会やES、面接をして振るいにかけているのです。

企業が何のために採用するのかという理屈を理解せず、大学受験での成功体験、つまり模範解答=求められている正解を答えることが採用だと勘違いしている人が、有名大学なのにうまく行かない人には圧倒的に多くいます。多くの先輩内定者と同じ答えが「正解」であって、正解を答えれば採用されるというのは、受験では通じても企業では通じません。アピールが間違っているのです。


・企業選びのミス
ネット就活の影響で、エントリーだけなら理論上無制限に応募可能です。ネット就活の実態を知らないマスコミなどは、「一人で200社も応募する今の就活は異常」などと騒ぎますが、エントリーだけなら就活ナビを使えば200どころか1万でも2万でも可能でしょう。もちろんそんなことには全く意味がないし、何でもかんでもエントリー数さえ増やせば根性で成果が出てくるというようなものではありません。

むしろ応募においてしっかりと企業を選んでいるでしょうか?最近はどんな就活セミナーでもB2B企業にふれないものはないと思いますが、それはちゃんとやっていますか?応募先がすべてB2C企業だったり、そもそもB2B企業を知らないようであれば、結果が出ないのではなく、ルールもわからずに「就職活動というゲーム」に参加しているようなものです。

B2Cに代表される、超有名企業、超人気企業であれば、大学名を問わず採用は過酷を極めます。メガバンク、マスコミ、商社、日本中で知らない人がいないほどの有名メーカーがこれに当たります。一番最後の有名メーカーの「有名度」を計るのは簡単です。テレビでCMをやっているかどうかです。ここ10年以内程度でそれなりの知名度があるというのは普通、ほぼテレビCMのおかげといえます。何より自分がなぜその会社を知ったかをたどれば良いでしょう。世の中の人もだいたいは同じ尺度でその企業を認知しているのです。

いわゆる大手企業の象徴ともいえる東証一部上場企業だけで2千社近い企業があり、それ以外の上場企業、未上場大手、外資と合わせれば、それだけで万単位の企業があります。中小企業やベンチャー企業を合わせ、200万とも400万ともいわれる会社があります。そのわずか1%にも満たない企業「だけ」に集中すれば、何百社応募しようと自ずと不利な戦いになるのは必然です。


・失敗理由
ここに挙げた「企業選び」含め、上手く進まない要因は以下のようにまとめられます。
・アピール
・企業選び
・スケジュール

アピールについては冒頭の章で述べたように、企業が求めているものを理解しなおす必要があります。「戦略的就活術」としてサイトや本で説明していますが、企業が求めているのは一般論での正解や、「何をしたか(What)」の答えではなく、「なぜしたか、どうやったのか(Why&How)」です。答の情報自体には意味がありません。

面接を嘘つき大会と呼ぶ人はこれがわかっていません。面接でもESでも真実が何であるかなど、誰にも検証できません。だから答が何か(What)は問題ではなく、その答えをなぜ、どうやって導いたか(Why&How)で説得できるかどうかが重要なのです。典型的な「サークル副部長」も、「バイトでお客様のために接客」も「家庭教師/塾講」も、WhyとHowが無ければ何一つ説得できません。

企業選びを自分だけではできないのも学生である以上当然です。そうであればちゃんと企業選びのプロに聞けば良いのです。それは身近にいるカリスマ内定者の先輩とか専業主婦のお母さんとか、会社を引退したお父さんではありません。カリスマ内定者など、ただの一度も働いた経験のないただの素人学生です。(内定を取った努力を一切否定するものではありません)また、ドッグイヤー、インセクトイヤーと呼ばれる速度で変化するビジネスの世界で、バブル時代や昔の仕事のことしか知らない人は、たとえ大人であっても少なくとも現在のビジネスの人ではありません。

指導教員も、大学院を出て以来大学業界(=先生)しか経験していない方だと、普通は厳しいかも知れません。(企業人並みにバリバリ産業界と連携している例外の先生もいる)しかし大学のキャリアセンターには必ず相談員の方がいるはず。現在も何らかの形でビジネスに関わっている相談員の先生なら、プロとして企業選びの相談には最適です。キャリアコンサルタント資格などあろうとなかろうとたいした影響はありませんが、ビジネスセンスをお持ちかどうかは致命的に重要です。


・スケジュール対策
「戦略的就活」を実践してきた人は、すでに去年の段階でこうしたことを検証し、実行しています。残念ながら今まだ結果
が出ていないのであれば、スケジュール対策は一つしかありません。
「今すぐ、動く」これだけです。

もはやしっかり準備をして就活に臨む時期は終わりました。
今すぐB2B企業を調べ、エントリーできるならただちにして、一刻も早くESを出すしかありません。OB訪問や企業説明会を待っている時間は今はもうないと言えるでしょう。できることをすぐ始めて下さい。
研究の都合でスタートが遅れた理系修士や留学などでタイミングが遅れてしまった学部生も、ここで上げたような「今できる」対策をする時期です。実際現段階で募集を締め切っていない大企業が多数あります。わずかな手間を惜しまず、自ら動くことができれば、まだまだ十分間に合います。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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