コンテンツマーケティングをなめるな!

2016.04.04

営業・マーケティング

コンテンツマーケティングをなめるな!

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

Contents is God!コンテンツマーケティングにおいて、成否のカギを握るのは、当たり前の話だが『コンテンツ』である。では、そのコンテンツは、どう書けばよいのだろうか。時々、筆者のサイト経由で「1本1000円ぐらいで、月50本ほど書いてもらえませんか?」などという依頼がくる。バカ言っちゃいけないよの世界である。

コンテンツとは関心へのフックである

そもそもコンテンツマーケティングとは何か。この手のバズワードは、みんながわかったつもりで使っているようでいて、本質は意外に理解されていないものだ。いまコンテンツマーケティングといえば、電博をはじめとしてWeb系の代理店や編集プロダクションが「私たちはこう考えます」的なコメントを各社のサイトにアップしている。
例えば電通は
「コンテンツマーケティングとは、有益で説得力のあるコンテンツを制作・配信することによって、ターゲット・オーディエンスを引き寄せ、獲得し、エンゲージメントをつくり出すためのマーケティングおよびビジネス手法を指す。その目的は、収益につながる顧客の行動の促進である」と定義する。また「メディアを借りるのではなく、自前のメディアを持つこと」ともある。要約すれば、自らの媒体(≒オウンドメディア)を中心に情報発信して顧客との良い関係をつくり、収益につながる行動を起こしてもらうこと」と書いている(http://dentsu-ho.com/articles/1532)。
大切なのは「有益で説得力のあるコンテンツ」である。これがあるから、関心を持った潜在顧客が検索して、アクセスしてくれる。そんなものが1本1000円で書けたら、これほど楽なことはない。逆に考えれば、今まで顧客の「関心を引き・興味を持ってもらい・欲しいと思わせる」ために、企業がどれだけのコストをかけてきたかを考えればよい。

「有益で説得のあるコンテンツ」とは何か

コンテンツの核心は「有益で説得力があること」。と聞いて、すぐさま一つの疑問を持った人は、コンテンツライティングできる可能性がある。決定的に重要な疑問である。それがどんな疑問か、おわかりだろうか?
「誰にとって?」である。誰に対して有益で説得力があるのか。ここを考えていないコンテンツに価値などない。
例えば、半導体メーカーのロームが展開しているサイト「DEVICE PLUS(http://deviceplus.jp/)を見てみよう。次のようなタイトルの記事がある。
「1個のMOSFETでモータをPWM駆動させるときのモータに並列接続するダイオードに流れる電流について」。InsightNowの読者の中には、このタイトルを読んで「これは読んでみなきゃ」と思われた方が、もしかしたらいるかもしれない。けれども、読者の95%ぐらいは、このタイトルを見て「はあ?」となったのではないか。
けれども、コンテンツマーケティングのコンテンツとしては、この記事は高く評価すべきである。人伝えに聞いた話ではあるが、このサイトのコンテンツ制作については、一本あたり数十万円のコストがかけられているという。それでも安いというか、正しく表現するならコストパフォーマンスは極めて高いと思う。
なぜなら、これを読んで欲しい相手に対して、この記事は有益であり、説得力があるからだ。こうした情報を探している相手には、ピンポイントで刺さる内容である。しかも、ロームの製品であるダイオードの選び方で、記事が締めくくられている。
つまり、この記事を読んだエンジニアが「ロームのダイオードを使おう」と思えば、そこで発生する取引は、最低でも数十万円、大きければ数千万単位になるかもしれない。それほどの力をコンテンツは持ち得るのだ。しかも、この手のコンテンツは、内容に関する新技術が登場するまで使い続けることができる。言うまでもなく、こうした「誰かにとって有益で説得力あるコンテンツが増えれば増えるほど、Googleでの検索順位も上がっていく。
コンテンツマーケティングがBtoBの主流になるのは、必然と言わざるをえない。

コンテンツを書くために必要なSTP

では、『特定の誰かのために』『有益で説得力のある』コンテンツを書くためには、どうすればよいのか。ここで決定的に重要なのが、マーケティングの知識である。
特定の誰かを定めることをターゲティングという。有益で説得力があること、すなわち卓越したポジショニングを取っているということだ。明確にセグメントされたマーケットにおいて、絞り込んだターゲットに向けて、競争優位なポジションを伝える。これをマーケティング用語でSTP、つまりセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングという。
このSTPが明確に定まっていないかぎり、刺さるコンテンツを書くことはできない。さらにいえば、マーケットの状況をマクロ・ミクロの両面でわかっている必要がある。といえば、これはPEST分析、3C分析、さらには5FやクロスSWOTも理解していなければならない。絞り込んだ顧客についてのペルソナを描いておくことも必要だろう。
理想は、特定ユーザーに対するインタビューを行い、生の声を盛り込むことだ。となれば、業界動向を踏まえた上で、相手から話を引き出す取材力も欠かせない。
その上で、文章力が求められる。文章が読みやすいことは言うまでもないが、ここは広告のコピーのような、いささかトリッキーなレトリックは邪魔である。相手が知りたいことを仮想しているのだから、それをどれだけていねいに、理路整然と書くことができるか。求められるのはロジックのわかりやすさである。わかりやすさのカギは、文章のまろやかさにある。
もちろん、ターゲットの検索行動を読んでおくことも欠かせない。だからといって、キーワードを意味もなく放り込んだのでは、まともな文章として成立しない。Googleに嫌われる。
BtoBのコンテンツライティングは、奥が深い世界なのである。

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