ショーンKはいまだに世間を欺いている

2016.03.19

組織・人材

ショーンKはいまだに世間を欺いている

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 芸術学部 哲学教授

/経歴詐称は、学位職位の万引き。多くの人々から、ほんのわずかの可能性を少しずつ掠め取ってきて、自分の私利私欲に資する。自分の可能性を奪われた方は、もともと可能性に過ぎず、それもわずかの差なものだから、やつに奪われたことにすら気づかない。/

 経歴を詐称したと言ったって、だれも被害にあったわけじゃなし、なんて世間に言わせてしまう、それどころか、あいつは悪くない、経歴偏重の世間が悪い、なんて言う同類まで出てくる。盗まれた被害そのものまでごまかしてしまうというのは、やはり天才的な悪人だ。


 経歴詐称は万引きと同じ。やつの手口は、こうだ。このやり方を繰り返せば、チョコ板一枚が永遠無限に食べられる。そして、こうやって一粒を自分が取っても、見てのとおり、何も減っていないのだから、何も盗んでいない、というのが、やつの言い分。世間も、これにコロッと騙される。


 言うまでもなく、こんなことが成り立つわけがない。この図も、思いっきり拡大すると、インチキがわかる。じつは、つなぎ目の粒が、ほんのちょっとだけ寸足らずなのだ。複数の粒から、わずかずつ、掠め取って、1粒分を捻出しているだけ。


 ショーンの例も、思いっきり拡大してみよう。たとえば、就職活動。子供のころから君は、その仕事にあこがれてきた。そのために君は苦労して受験勉強をして有名大学に入り、関連する資格も取り、経験も積んで、ようやくいま、その最終選考まで残った。ところが、もう一人、候補者が残っている。それがショーン。ハーバード大卒だと。案の定、君は落とされる。君は別の人生を歩まなければならなくなる。君の人生、夢も現実も、すべて彼に奪われた。後になってショーンの経歴詐称がバレても、君の人生は、もう取り戻せない。


 こんなはっきりした悪行も、薄めてしまうと見えなくなる。1000人が応募した企業の100人の採用者の中にショーンが一人、紛れ込んでいた。本当なら、別のだれか一人が合格したはず。しかし、それが残りの900人のだれかは、だれにもわからない。つまり、900人から広く薄く、それぞれの学生が持っていた合格可能性をそれぞれから900分の1ずつ掠め取って、彼は自分の1/1の合格を捻出してしまったのだ。もともと可能性など、目に見えるものでなし、落ちた900人は、だれも何を盗られたのかもまったく気づかない。


 ショーンが最初から正直に経歴を示していれば、彼が大和証券の経済番組や講演会を担当することなく、もっと別の、しかるべき人物が担当していたはず。『報道ステーション』でも、『とくダネ!』でも、もっと別の、しかるべき人物がコメンテーターになり、人の意見をオウム返しに肯定する以上の、もっときちんとした鋭いツッコミを入れていたはず。そうであれば、東芝やシャープみたいないいかげんな会社の経営陣も出てこれなかったかもしれないし、社会問題もきっちり追及され、もっと深く考察され、その後の事件の繰り返しが防げていたかもしれない。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 芸術学部 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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