マイナス金利の行きつくところ

画像: photo AC: himiko さん

2016.03.12

ライフ・ソーシャル

マイナス金利の行きつくところ

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 芸術学部 哲学教授

/消費税8%は、貯金の余裕のない世帯にとって、生涯賃金総資産が9年で半減するほどのマイナス金利を食らっているのと同じ。上層や企業からも貯金や預金を吐き出させるためには、消費税を超えるところまでマイナス金利(貨幣資産課税)を上げなければならない。しかし、必要も見込も無いのに消費や投資を強いられ、貯金もできないとなると、あとは脱経済生活を目指すしかあるまい。/

 マイナス金利の政策としての意義はさておき、マイナス金利が妥当とされてしまう経済状況は、どこへ向かっているのか。


 通常、金利はプラスだ。カネは使ってこそ財が得られる。そして、いま使いたい人の方が多いから、自分は使わないで人に貸してくれる人に御礼、つまり金利が付く。これに対して、マイナス金利ということは、いま使いたくない人の方が多く、人から借りてまで使ってくれる者の方に御礼が付く。


 この御礼、つまり金利は、いま自分が使えば、それくらいの利潤があってしかるべき、という損得ぎりぎりの数値まで上がって均衡する。たとえば、バブルのときのように、いま早く投資しておけば、これくらいはだれでも当然に儲かるはず、というぎりぎりのところまで金利は上昇する。これが逆にマイナス金利だと、いま使えば、これくらいの損はやむをえない、と市場がみなしている、ということだ。


 金利計算では「72の法則」が便利。年利x倍増年数=72。10年で倍にするには、年利7.2%の複利運用、ということになる。実際、バブルのころは、これくらいだった。一方、サラ金の上限18%だと、4年で借金が倍になる。さて、マイナス金利の場合でも、この計算は成り立つ。マイナス7.2%だと、10年で半減。


 マイナス金利導入で騒いでいるが、じつはすでに消費税がマイナス金利の同類。使わなければ、10万円は10万円。しかし、10万円を使うと、消費税8%だから、8000円の「罰金」を食らう。通常なら、加熱しすぎた消費を抑制するブレーキとして消費税を使う。だが、支出が最低限の生活必需品ばかりで、この消費全般に恒常的にかかってきている、ということは、収入の全額を支出して消費税を食らっている、貯金の余裕も無く、なにかしらのローンを負っている中下層世帯は、実質的には複利で、9年で生涯賃金総資産が半減していっているのと同じ。上層世帯や企業も、ちょっとやそっとマイナス金利のアクセルを踏んででもカネを使わないのは、フローの支出で消費税の罰金を食らうより、多少のマイナス金利で引かれても、元がストックとして残る貯金や預金の方がまだましだから。鞭と鞭で、マイナス金利(貨幣資産課税)が消費税より大きくなったとき、ようやく、どのみち損なら、損の小さい方、つまり、貯金や預金より消費や投資、ということになる。


 しかし、貯金もできない、となると、生活保護受給者と同様、ヘタに稼ぐだけバカバカしい。カネは、ババ。必要以上に稼がない、持たない、残さない、ということに。いや、現物資産、金や不動産なら、という連中もいる。だが、金なんて、もっとも個人で使用価値が無い。まして不動産など、通貨がバカになって、流動性、換金性を失えば、それこそ権利登記上の空理空論。戦後の焼け跡のように実効支配するやつが出てきてしまう。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 芸術学部 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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