ドラえもんがのび太を殺す

画像: 日野日出志『銅鑼衛門』から

2016.03.06

ライフ・ソーシャル

ドラえもんがのび太を殺す

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 芸術学部 哲学教授

/ドラえもんにすれば、本は売れる。学校も、子供たちに迎合すれば、子供たちに喜ばれる。だが、本や学校はしょせん実体験のための準備。つまらなくて、難しくて、面倒で、でも、それを読んで、そこで学んで、外に飛び出したとき、いままでできなかったことができ、自分自身が生き生きと活躍できる世界が見つけられる。それが本、それが学校じゃないのか。/

 ドラえもんは便利だ。なんでも、なんとかしてくれる。しかし、そのせいで、のび太は永遠の小学四年生。意志薄弱、無気力怠惰。不幸な将来という運命はいまだに変わらず、ドラえもんは未来に戻ることもない。典型的な共依存だ。


 子供の問題ではない。むしろ出版社、そして、学校や教育産業の方が、のび太。最近の本屋や図書館の児童書のコーナーを見ると、びっくりする。ドラえもんだらけ。国語算数理科社会、英語に歴史に自然、スポーツ。ぜんぶマンガ。中はイラストだらけで、文章はスッカスカ。本が売れなくて困ってるんだ、どぉにかしてよぉ、ドラえもぉ~ん、ってか。実際、ドラえもんに「学習」とつければ、なんでも、なんとか売れてしまうらしい。


 ドラえもんに限らない。幼稚園・保育園は、アンパンマン中毒。ミッキーと違って版権が緩いせいで、なにかと言うと、なんにでもアンパンマンを使う。運動会も、お遊戯会も、バスを待つ間もアンパンマン。イエス様や仏様よりアンパンマン。小学校の図書館は、ゾロリだらけ。プラネタリウムまで、ドラえもん、アンパンマンにコナン。大学や専門学校も、学生集めに四苦八苦しているところは、就職の見込みも立たないのに、すぐガキに受けそうな学科をでっちあげる。おまえら、みんな、のび太か?


 子供はハンバーグが大好き。それ以上に、ハンバーグは楽。作るのが安くて簡単。味をごまかして、野菜も混ぜ込める。困ったときの鉄板メニューだ。しかし、親なら、肉は硬くて、魚には骨があり、野菜は苦甘いことを教えていく義務がある。高くて、調理が面倒でも、なんとか肉や魚、野菜の味を教えていく義務がある。ハンバーグばかりでやりすごしていたら、子供がダメになる。いや、徹底的にダメにした方が、永遠に親離れできず、手元に置いておいて、カネづるにして、老後の世話もさせられ、その方が都合がいい?


 昔、1970年から、小学館では「入門百科シリーズ」を出していた。それが、バブルの終わり、1994年、207巻で息絶えた。学研では「ジュニアチャンピオンコース」。1971年から2000年くらいまでは売られていた。勉強も学習も知ったこっちゃない。野球に始まり、探偵入門、手品、世界の謎、占いやクッキング、超能力まで。著者たちも、いまにして思うと、けっこうなもので、学研『名探偵登場』なんか、モンキーパンチ本人が巻頭の「ホームズ対ルパン」を楽しんで書き下ろしていたりする。河出書房は、経営が青息吐息でも、「少年少女世界の文学」全24巻別2巻を世に送り出した。翻訳は、犬養道子や丸山才一、谷川俊太郎、福永武彦、イラストは岩崎ちひろや長新太などなど。これがおもしろくなかったわけがない。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 芸術学部 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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