コンセプチュアル思考〈第1回〉 「知・情・意」3つの思考

画像: Career Portrait Consulting

2016.02.05

仕事術

コンセプチュアル思考〈第1回〉 「知・情・意」3つの思考

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

概念を起こす力・意味を与える力・観をつくる力を養う『コンセプチュアル思考』のウェブ講義シリーズ

1981年にノーベル化学賞を受賞した福井謙一氏は次のように言っています。

「結局、突拍子もないようなところから生まれた新しい学問というのは、結論をある事柄から論理的に導けるという性質のものではないのです。では、何をもって新しい理論が生まれてくるのか。それは直観です。まず、直観が働き、そこから論理が構築されていく。(中略)だれでも導ける結論であれば、すでにだれかの手で引き出されていてもおかしくはありません。逆に、論理によらない直観的な選択によって出された結論というのは、だれにも真似ができない」。
───『哲学の創造』PHP研究所より


◆末端の競争・処理に振り回されないための根源をつかむ思考
私たちは、「賢いだけの頭」「処理するだけの手足」を増やせばいいのでしょうか―――?

企業の人事部や経営層の方々と議論をすると、よく出てくるのが「うちも『iPhone』のような製品を生み出す人材が育てられないか」「なぜうちの社員は『iPhone』のような発想ができないのか」という声です。故ステーブ・ジョブズ氏を中心にアップル社がつくりあげた一連の製品群(iMacからiPod、iPhone、iTunes、iPadに至るまで)は、はたして論理的な思考の賜物だったのでしょうか。確かに論理は重要だったでしょう。しかし何よりも決定的だったのは、コンセプトを起こす力であり、グランドデザインを描く力であり、製品世界をイメージする力でした。さらには「Think different」という同社が文化として持っている強力な意志の力でした。これらはコンセプチュアルな能力に属するものです。さらには美・快の体験価値を具現化する力です。あれらの道具に最初に触れたときの操作感覚の驚き。そして日常使うときのウキウキ感。それらの実現には卓越したデザイン的思考が不可欠でした。

ビジネスパーソンにとって、帰納的・演繹的に推論ができる、「MECE」に考えることができる、あるいは「4C」や「SWOT」「5forces」などの思考ツールを使いこなすことができる、といった「知の思考」技術は武器になります。しかし、それらは万能ではありません。『iPhone』のような独創的なアイディアは、福井氏も指摘するように論理とはちがうところでの飛躍によって起こります。

その飛躍を可能にするものこそ、「意の思考」であり、「情の思考」です。むしろ論理はその発想の飛躍を助けるために有用なものといえます。要は「知・情・意」3つの思考の基盤能力を養い、それらをたくみに融合させる分厚い思考ができる人財を育てることです。

ますますスピードが加速するビジネス世界にあって、私たちは末端の専門知識・末端の製品技術の競争に忙しく立ち回っています。そのために根源をみることをしなくなりました。個と組織がほんとうの力をつけるためには、根源をみつめ考える力が必要です。存在を考える、意味を見出す、観をつくる。そのうえで末端の競争、処理、効率化に動く。この視点に立ち、私は基盤的な思考教育として「コンセプチュアル思考」を提唱するものです。以降、このシリーズ記事では「コンセプチュアル思考」の内容を講義形式で書き連ねてまいりますのでご期待ください。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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