ユニクロやマックはナードに騙された

2016.01.23

営業・マーケティング

ユニクロやマックはナードに騙された

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 芸術学部 哲学教授

/ジョック/ナードの対概念は、もともとは米国のスクールカーストの頂点と最底辺。女王蜂に働き蜂が従うように、人間もまたジョックが「アルファ」(群れの筆頭)であり、ジョックが好むものにだれもがあこがれる。だが、編集者やデザイナーは、まさにナードだらけで、ナードこそが「本当」はかっこいいんだ、というルサンチマン(怨嗟)を心底から信じており、その間違ったマーケティング方針を本気で主張する。/

 ユニクロやマックの経営が芳しくないとか。そりゃそうだろう。あんなつんつるてんでへたれなもん、体格の良いジョックは着られないし、食べた気がしない。ジョックに嫌われたものが、世間ではやるわけがない。ナード・マーケッターに騙されたのだ。


 ジョック(豪傑)/ナード(貧弱)の対概念は、もともとは米国のスクールカーストの頂点と最底辺。しかし、長年の広域流動の結果、いまや人間そのものの階層格差として世界中に広まり定着しつつある。すなわち、地域を越えて名家の子女は名家の子女同士と結婚し、その他はその他同士とくっついたために、家柄も学歴も身体も屈強優位なセレブ連中と、いろいろとさえない貧弱な庶民とに「人種」が分離してきてしまったのだ。


 この階層分離は、身分制の残った英国では昔から顕著だ。貴族と庶民では、身長や体格が露骨に異なってしまっている。しかし、その英国から独立したはずの米国でさえ、昨今、上記のような状況なのだから、その他のヨーロッパ諸国なども当然。もちろん、城館をホテルに改装して営業しないと喰っていけない貧乏貴族もいるし、ベッカムやザッカーバーグのようなスポーツ成金、IT成金もいるが、これらはまさに例外。現実の人生の安定度は雲泥の差。


 ジョック/ナードでは、生活が違う。ジョックは、三食がっつり肉を喰う。ナードは、四六時中だらだらと炭水化物のジャンクフード。ジョックは、名誉職としてしか働かず、スポーツや余暇を満喫。ナードは、長時間の通勤、長時間の拘束、サービスやパソコンの単一仕事で一生を明け暮れる。そんな違いが何代も続き、何代も交配した結果、体格や発想からして、ジョック/ナードでは、まったく違うことになってしまった。


さて、ユニクロだが、1984年にできたときは、中産階級のための高品質低価格大量生産でヒットした。これを、日本ジョックの典型のようにガタイがでかいタナカノリユキと玉塚元一がフリースやBODY TECHなどのスポーツ系高機能商品で人気ブランドに押し上げた。キャラクターも、チアガール(ジョック・クィーンのシンボル)のごっついゴリエ。カラフルな原色だらけのアメリカン・カジュアルがウリで、店舗店員もまた、体育会系の体力勝負。ところが、2005年9月に玉塚が解任されると、雑誌や若手デザイナーとのタイアップ比重が増し、2006年秋シーズンものから「スキニー」や「スリム」へ急旋回。ジャケットもケツ丸出しで暗いNYユダヤ系風ナード・ファッションで、色数も激減。おしゃれになったつもりかもしれないが、十年前とは、もはやまったく別の、負け犬ブランド。客層も、ちっちゃい若者と老年ばかり。かつて高機能低価格のユニクロ商品を歓迎したアスリートたちは、もはや近寄りもしない。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 芸術学部 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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