社会インフラを考える(11)スマートライティングで省エネを

画像: Timo Kuusela

2016.01.13

経営・マネジメント

社会インフラを考える(11)スマートライティングで省エネを

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

街灯・道路灯・信号が誰も通らない時には消灯する。人やクルマが通るタイミングに合わせて点灯・作動する。今のICT技術ならこんなこともできる。しかし技術力はあるはずの日本社会での実現の目途は立っていない。

尤も、理屈の上では全く問題がなくとも、人の心配のネタは尽きない。「自転車は感知されないのでは」「小動物がうろつくだけで、人と間違って点灯し続けるのではないか」「クルマが何かの拍子に故障して立ち止まった途端に道路灯が全部消えてしまい、周りが真っ暗になってしまうのでは」…等々。

そのために今、省エネ意識の高い欧州を中心に、公共の「スマートライティング」プロジェクトが幾つか走っており、想定外の問題が生じないのか、どういうタイミングで切り替えるのがベストなのか、様々な検証作業が進んでいる。

旧来の水銀灯や白熱灯からLED灯に切り替えることですぐに現れる省エネ効果が一番大きいのが実情だが、さらに省エネ効果を引き出そうと熱心に取り組まれているのが、ここまで話してきた「誰も通らない時には消灯する」という自動切り替え機能だ。

それに水銀灯や蛍光灯と違って、LEDだと消灯・点灯を繰り返してもすぐに照度も上がるし寿命も縮まらないので、こまめに切り替えることが実用的な節約に直結するのだ。

こうしたプロジェクトで蓄積された知見がやがてICTベンダーが提案する道路交通システムや都市管理システムに反映され、街ぐるみの省エネが期待されるのだ。欧米および豪州・NZではそうしたシナリオが着々と進んでいる。

世界市場をリードしている有力なベンダーとしては、米Streetlineや米Silver Spring Networksが代表といえよう。

それにしてもICT企業の少なくない日本で、しかも信号が無駄に多い日本で、あまり公共「スマートライティング」プロジェクトが行われていないのはどうしたことだろう。

日本で「スマートライティング」というと、商業施設および工場などでのLEDへの切り替えぐらいしか目立たない。残念ながら街灯や道路照明・信号の「スマートライティング」はなかなか日本では実現していないのだ。これは、国交省・自治省・総務省(警察庁を含む)間の連携がほぼないことが影響していそうだ。もしかすると必要性さえ感じていないのかも知れない。

海外での「スマートライティング」プロジェクトに日本企業が参加しているケースも今のところほとんどないようだ。したがって、その成果である知見を持ち帰って日本で実用化するというシナリオは、このままでは待てど暮らせど実現しないのではないか。少々気を揉む事態だ。
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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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