東京オリンピック・エンブレムはもう無理筋

2015.08.10

経営・マネジメント

東京オリンピック・エンブレムはもう無理筋

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 芸術学部 哲学教授

/サントリーのトートバッグのデザインの元ネタが割れてしまった以上、著作の独立性を主張するのはもはや無理。これ以上、無理を重ねると、損害額が拡大し、偽ブランド品のように廃棄処分しなければならなくなるゴミが増えるばかり。そして、最後には、だれかが責任を取って、クビを吊らなければならなくなってしまう。/

 もう止めた方がいいって。小保方と同じ道を辿っている。審査員たちも、政治家や役人たちも、奈落へ道連れになるぞ。ゴリ押しを続ければ、それだけ関連支出が拡大し、いよいよ取り返しのつかないことになるぞ。


 ただでさえ記者会見が手遅れなのに、そこで変なアルファベット表なんか出してきて、あれは逆に、プロのデザイナーとしての「実験ノート」に相当するものが無い、ということを自白してしまっているようなもの。本来なら、こういう構想スケッチとか、こういうコンストラクションの試行錯誤段階のものが大量にあるはず。それで、発想の経緯をきちんと示せれば、少なくとも盗作の疑いは晴れたはず。

 商標がどうであれ、著作権は、ベルヌ条約によって無方式主義、つまりなんの登録も無しに、ただ創作しただけで、その時点に発生している。ただ、著作権に基づいて権利侵害を主張するには、類似性だけでなく、依拠性(パクったやつが自分の作品を知っていたということ)を立証しなければならない。その立証責任は、原告側にある。たとえネットで知りえた、としても、相手が知っていたという事実を証明するのは、なにぶんにも相手の側に経緯の資料がある以上、かなり困難だ。(へたに自分の構想スケッチを出すと、その画像から、知っていたということを証明してしまう(知っていたということにされてしまう)危険性があるので、記者会見で、それがあるにもかかわらず、それを出すのを弁護士に止められたのだろうか。)


 ただし、この依拠性は、間接事実からの推認でも十分とされている。すなわち、①知りえた可能性、②類似性以上の酷似性、③オリジナルの周知性、の3点が証明できれば、依拠した、ということになる。逆に、弁護側は、①絶対に知りえなかった、②それほど似ていない、③それほど有名じゃない、と抗弁することで、独立創作としての別個の著作権の存在を証明する。


 当初、この線でいける、勝てる、弱小国ベルギーの田舎町の工業デザイナー上がりなんぞ、仕切役で世界を股に掛ける日本の広告代理店の力と、発注元で国際的一大イベントであるオリンピックの威光、そして、泣く子も黙る内閣官房知的財産戦略推進事務局とノートリアスな経産省商務情報政策局の兄の威信に懸けて、元総理のラグビー仲間よろしくタッグを組んで捻り潰してやる、とでも考えたのだろうが、サントリーのトートバッグの一件で、このデザイナーがpinterest、その他、ネットのかなり奥深いところから巧妙に素材を拾ってきていることが完全に明らかになってしまった。これまた、①知りえた可能性、というだけでなく、実際にネットで知った事実性がかなり高い、ということを自分で立証してしまったようなもの。おまけに、②酷似どころかまんまコピペの常習犯、となると、当該エンブレムに関してのみ、似ていない、関係が無い、などと主張する方がもはや難しい。こんなのひとつを守るために、どこぞの外国のチンケなゆうえんち並みのいいわけで、日本の輸出産業やコンテンツ産業の信用全体まで危険にさらす、などというのは、あまりバカげている。なにより、あまりにみっともない。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 芸術学部 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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