社会インフラを考える(10)新国立競技場計画の破綻と“ごまかし”

画像: JAPAN SPORT COUNCIL HP

2015.07.13

経営・マネジメント

社会インフラを考える(10)新国立競技場計画の破綻と“ごまかし”

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

東京五輪・パラリンピックのメイン競技場となる新国立競技場の建設計画。抑制されたはずの建設コスト見積もりにも、建設完了後の収支計画の説明にも、明らかなごまかしがある。

2520億円に膨れ上がった総工費に対し財源確保の見通しはいまだに立っていない。1000兆円という空前絶後の負債を抱える国家でありながら、財政再建に取り組むどころか、不必要な巨額赤字をなお積み上げようとするのは世界中のもの笑い以外の何物でもない。

しかし見直しを求める世論を無視するように、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)有識者会議が建設計画を了承したことに、各方面から批判が渦巻いている。

主な批判の論点は当初予算の倍近い金額に膨れ上がったこと。確かに当初の想定が大甘だったことは間違いない。

審議委員だった安藤忠雄氏は「コンペの条件としての予算は1300億円であり、応募者も認識しています」とコメントしており、当時の審議委員の一人であった建築家は「委員にはコスト見積もりを精査するようには求められなかった」とインタビューで述べていた。

つまり、建設コストの根拠がいい加減なままデザインを決め、基本設計や実施計画を詰めてみたら倍に膨れ上がったということだ。プロセス自体に問題があるとしか言いようがない。

これはまさに東京五輪向け整備に関し、小生が従来から指摘してきた懸念が現実化している事態だ。

http://www.insightnow.jp/article/8089

http://www.insightnow.jp/article/7900

無策のまま最悪の事態に至ることを避けるため、この問題に関し4つほど関係者の「ごまかし」を指摘しておきたい。

1.最新の建設コスト見積もりに潜むごまかし

当初見積もりとの食い違いに関するJSCの今回の説明にはごまかしを感じる。建設計画の了承を発表した際にJSCは、当初予算から倍増した理由を次のように説明した。資材や人件費の上昇で350億円、消費増税分で40億円増、さらにアーチ2本で建物を支える「キールアーチ」というデザインの特殊性によって765億円増、と。

まるで途中から「キールアーチ」になったような説明である。しかし途中から環境条件が変わってしまった資材・人件費の上昇や消費増税と違い、「キールアーチ」のデザインは五輪が決定する前から分かっていた条件である。

もし「このデザインでは予算1300億円に収まるのは初めから無理なんです」と言いたいのなら、何としてもデザインを変えるべきだったという肝心の結論も伝えるべきだろう。

もしくは「このデザインでは建設経験が世の中にほとんどなく、正しいコストの見積もりが限りなく難しいんです」と言いたいのなら(建築家の幾多のコメントを拝見する限り、こちらが真実に近いだろう)、今回示されている「2520億円」という総額もまた信頼に値しないと言わざるを得ない。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

当社は事業戦略・業務改革の2つのテーマを中心に、企業改革をお手伝いします。代表である私は、30年弱にわたる戦略・業務コンサルティングの経験と実績を基に、ハンズオンの姿勢で、実践的かつスピーディな課題解決を心掛けています。事業戦略策定については新規事業・新市場進出を中心にお手伝いさせていただいておりますが、最近は既存事業の見直しも増えています。その際のスタンスは「選ばれる理由」を明確にすることです。またBPMのエヴァンジェリストとして、BPMアプローチ(KPIを軸に狙いと手段を整合させた上で、PDCAサイクルに沿った継続的プロセス改革を進める手法)による「空回りしない」業務改革を唱えております。詳しくは弊社HPをご覧ください。ご登録いただければメルマガもお届けします。

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