大学は役には立たないよ

2015.06.05

ライフ・ソーシャル

大学は役には立たないよ

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 芸術学部 哲学教授

/大学は知のテーマパーク、文化のサーカス。そんなところに遊びに行くのに、役に立つとか、立たないとか、貧乏くさいことを言っていたら、すこしも楽しめないよ。/

 大学は役に立つべきだ、なんて言っている人、まず教養が無い。もっとはっきり言ってしまうと、育ちが悪い。すべて金儲けの損得勘定で世界を計れる、という発想が、人間の品性品格として貧しすぎる。そんな考え方しかできないんじゃ、どんなにカネを儲けても、けっして人として幸せにはなれないよ。ちょっとはちゃんと大学で勉強してみてはどうだろう?


 たとえば、海外旅行が役に立つか? ヨーロッパ10日間名所巡りに行っただけで、英仏独語ができるようになって、向こうで友達ができて、大きな商談がまとまり、参加費用以上の収益が出たりするか? ディズニーランドやUSJが役に立つか? あれこれ見て、あれこれ乗って、それで教養が身についたり、体力が身についたりするか?  落語を聞いたり、小説を読んだりして、言葉や漢字が覚えられるか。そもそもそんなことを求めて、落語や小説に親しむやつがいるか?


 大学も似たようなもの。知のテーマパーク、文化のサーカス。見たことも聞いたこともなかったような世界の不思議な話が集まっている。それがときには役に立つこともあるかもしれないが、おうおうにまったく役に立たないというところが、すごくおもしろかったりする。たとえば、ガロア理論なんて、この世に生きていて必要になるなんていうことは絶対に無いし、そんなの学んでも、まったく役に立たない。でも、これが、ものすごくおもしろい。いったい、だれがこんなすごいことを考えたのか、と考えるだけでも、わくわくする。


 大学が役に立つべきだ、なんていう決めつけが、日本人だけの極端なガラパゴス的発想。明治維新以来、和魂洋才、欧米に追いつけ追い越せ、で、「大学」という名のなにかが情報輸入と産業開発の拠点とされてきてしまった。でも、それ、世界標準の、本来の大学じゃない。そっちの方が変。もともと大学なんて教会や寺院の付属機関で、神仏の作りたもうたこの世界の驚嘆を学び知るための場所。学び知ったところで、それは神仏だからこそできたことで、人間が学び知ったことを役に立てようなんて思ってもみなかった。せいぜい神仏の御意思を理解し、みずからもまた非力を尽くそうとするくらい。


 大学は役に立つべきだ、なんて馬鹿なことを言っている人、ちゃんと大学で勉強してごらん。この世に人間というものが登場して以来、人間は役に立たないことばかりやってきた、ということがよくわかる。極言すれば、人間なんていうものがこの世界に存在していること自体、なんの役にも立っていない。まず、大学って何か、役に立つってどういうことか、落ち着いて考えてみたら、どうだろう? 昨今、中途半端な日本の「大学」=官僚制のドロップアウターたちが旧全学連のポルポト派よろしく大学解体論で庶民を煽るが、大学は何だかわからん、自分たちにわかるものにしろ、って、それ、勉強じゃないよ。よくわかんないから、勉強してみようか、っていう話なのに。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 芸術学部 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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