大塚家具は問い方が間違っている

2015.03.03

経営・マネジメント

大塚家具は問い方が間違っている

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 芸術学部 哲学教授

/戦後の親は長生きで、変化の対応は急務だ。だが、連続か、変革か、を争うのは、問い方が間違っている。変革は必要だ。しかし、連続も絶対だ。/

 大塚家具の娘社長のやり方は、現場経験の乏しい新人コンサルがハマる間違いの典型。新人コンサルは、どちらが正しいか、を問う。だが、論理は、無時間的で、そこには、勝ち負けしかない。彼女が間違った問いを仕掛けた時点で、父会長一派を窮地に追い込み、会社をこのような断絶の事態に至らしめることは予測に難くなかった。

 どちらの戦術が正しいか、を問うなら、娘社長が正しいに決まっている。時代は変わる。デパートがどこも縮小撤退策しか立てられない現在になお、デパートを追い、それに並ぼうとする父会長の戦術は、もはや時代錯誤としか言いようがない。まして、父は、娘が一橋の塩野谷ゼミ出身である、ということが経済界で持つ意味も理解できていない。この状況でプロキシファイトもないものだろう。

 だが、娘社長も、いかにもシロウトくさい。問いの立て方を完全に間違えた。自分の戦術が正しいことは、社長なる以前の大前提。彼女が社長となって問うべきだったのは、どうやって会社を正しい戦術に連続的に導くか、だ。机上では、方針転換も、組織改革も、一瞬でできる。だが、現実の組織は、従業員も、取引元も、顧客も、みな人間だ。会社を変える、ということは、彼らの生き方を、それどころか彼らの家族の人生までも変えてしまう、ということだ。誰だって、自分の人生を他人に勝手に振り回されたりしたくはない。だから、変革の美名の下に、傲慢な強権を発動すれば、求心力は急激に低下してしまう。それをやって乗り切れるだけの人望も確立していない、それどころか、危難にいっしょに飛び込んでもらえるほどの信頼が必要だ、ということすらわかっていなかったのではないか。

 塩ひとつまみを煮出すのに、七つの海を沸騰させるな。これは、経営の常識。イトーヨーカドーが全店舗をいきなり24時間営業のセブンイレブンに改装したら、コンビニというものは絶対に成功しなかっただろう。同じ世襲でも、トヨタが織機から自動車へ、カネボウが紡績から化粧品へシフトするとき、豊田喜一郎(現場現物主義)や武藤絲治(GK計画)は、創業者の親以上にこまめに内外に出向き、その途中のステップの連続的展開にこそ気を配った。過去の成功体験が強固であればあるほど、現場の顧客、従業員、取引元、株主、等々、これらの周到な根回し無しには、小さな実験的子会社さえ作ることはできない。

 プロのコンサルの場合、何が正しいか、以前に、社内外の利害関係者「forces at work」の洗い出しから始める。これを先にやらないと、誰が本当のクライアントなのか、誰のための解決策を出すべきなのか、正しさそのものが定義できないからだ。とりあえずの理想は、全方一両得のWinWin、いわゆるパレート最適化。だが、そうもいかない、どうしてもパラダイムのブレイクスルーが必要であるとなれば、どの手順で、どこを抑え、どうやって向こう岸までたどり着くか、数年がかりの工程表を作る。これが「戦略」。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 芸術学部 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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