”残業代ゼロ”をいかに組織活性化につなげるか

画像: Kheel Center

2014.07.03

経営・マネジメント

”残業代ゼロ”をいかに組織活性化につなげるか

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

工夫なしに「残業代ゼロ」を実施すると、日本全体では晩婚少子化、個々の企業では士気低下につながる可能性が高い。賢い企業経営者なら、対象者を中心に仕事のやり方自体を見直させ、真っ当な「残業ゼロ」を実現することを選んで欲しいもの。

一方、世の中には実際に、業績を上げながら実質的に「残業ゼロ」を実現した会社がちゃんとある。彼らのやり方を参考にする、可能な部分は真似る、ということは有意義だ。小生もお手伝いしたことが何度かあるので断言できるが、業績を上げながら「残業ゼロ」を実現するには、精神論ではなく真っ当な業務改革のアプローチと、ちょっとしたコツがある。

まず「全社一律に残業カット」とかの号令を掛けるだけではダメで、職場ごとに、できれば職種ごとに業務活動分析をすることが出発点となる。この業務の切り方にコツがある。それによりどういった仕事にどれほど時間を費やしているのかが「見える化」される。

次に、大きく時間を取られている業務から順に、「この業務にはこんなに時間を掛ける価値があるのか」「なぜこんなに時間が掛るのか」「どうしたらもっと短時間に済ませられるか」といった具合に理詰めで検討していくのだ。その際に有効な発想は「廃止」「簡素化」「IT化」「外部化」「平準化」などだ。

小生が分析に関与せずに進め方のアドバイスだけをするパターンもあり、その際によく見掛けるのだが、素人分析の場合には大概、一部の業務の括りを不適切にしてしまう。分析の途中でおかしなことになるため一部やり直す必要があるが、やっているうちに段々要領が分かってくるだろう。

他部門との関わりがキーになっている場合には、業務フローを描いて検討することが有効だ。一人ひとりで考えさせるよりグループで考えたほうがよい知恵が出ることが多く、しかもファシリテータといった役割の人がいたほうが、よいアイディアに速く到達できるという傾向がある。

確かにこうしたアプローチは一朝一夕で完了とはいかず、手間が掛るので面倒がる経営者が多いのだろう。彼らの言い分は「当社は既に十分効率的になっているので、今さらそんなことをやっても大した効果が出るとは思えない」といったものだ。でもこれは言い訳に過ぎない。

実際にやってみると、つい最近に要務改革を実施済のケースでない限り、どんな会社でも業務の無駄や非効率なやり方が毎年蓄積・肥大化しているもので、意外と大きな効果が出るものだ。しかも全体の残業代が結構減り(その分、給与に回せますね)、従業員のQOL(生活の質)向上、ひいては組織活性化と両立できるのだから、やってみて損はない。

賢い企業経営者なら是非、こちらのアプローチを採っていただきたいものだ。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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