書籍デザイナーに未来は無い

画像: Petr Čmerda

2014.06.10

営業・マーケティング

書籍デザイナーに未来は無い

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 芸術学部 哲学教授

/バブル時代、デジタル化で編集技術が飛躍的に向上し、書籍デザイナーという商売が爆発的に出版業界に食い込んだ。しかし、電子出版では、テキストデータ以上の余計なものは、あえてきれいに削ぎ落とされる。読者が本に求めているのは、見てくれのデザインではない。言葉、物語、感動だ。/

 電子出版になって驚くのが、書式の簡素化。つまり、本が純粋なテキストデータに戻って行っている。文字の大きさはもちろん、フォントや字詰めのような余計な書式が、アップロードで、きれいに落ちる。へたにややこしい書式があると、ひっかかってアップロードできない。ようするに、そういうものは、読者側には必要とされていない、という、電子書籍メーカーの判断だからだろう。

 とにかくひどかった。自分もその末席で仕事をしてきたが、書籍デザイナーとやらは、本の著者よりも、はるかにギャラが高かった。著者が数ヶ月、数年もかけて丹念に推敲を重ねても、若造の前読みに投げ捨てられ、出版会議でボロXソに貶され、さらに編集者や校正者の赤チェックに応じて何度も何度も書き直し、それでようやく、出版してくださる、出版していただける、というところまでたどりつく。しかし、今の時代、初版部数も知れている。実売部数となると、さらに少ない。印税は10%、どころか、ちかごろは8だの、6だの。おまけに、支払いは、半年後の実売部数で、なんていう、シミったれた出版社もある。一方、デザイナー。よほど奇妙な変形大型本でもなければ、どのみち、一般書籍の基本フォーマットなんて、ほぼあらかじめ決まっている。しかし、出版社側からの依頼だから、取りっぱぐれがない。編集者と打ち合わせして、ちゃちゃっと思いつきで一晩。これで、終わり。あとは振込待ち。

 とくにバブル後の出版不況に陥ってからは、ひどかった。どこの出版社も、事実上の自転車操業で、資金繰りのためだけに出版点数を爆発的に増大させた。そのそれぞれに編集者個人と怪しい関係の書籍デザイナーが付くものだから、連中はますます勢力を拡大。落ち目のタレント事務所がインチキ占い師にすがり付くように、編集者は、著者そっちのけ、原稿そっちのけで、神がかった書籍デザイナーの御託宣に精神まで病的依存。それで、外見は立派だが、誤字脱字のオンパレード、文体はぐちゃぐちゃ、内容はないよー、な、旬狙いのやっつけ仕事、ブックオフですぐに百円コーナーに入るような「本のようなもの」を粗製濫造。

 いや、本なんて、売れる売れないはデザイン次第、中身なんか関係が無い、と豪語する確信犯の編集者さえいる。実際、マンガみたいな、ちゃらい表紙に換えたとたん、バカ売れした本は少なくはない。とはいえ、そこまで言うなら、表紙の絵、だけの問題で、紙質がどうこう、フォントがああだこうだ、字詰めが、レイアウトが、なんて、それも関係が無い。というわけで、電子書籍は、そういうのを、ぜんぶ取っ払ってしまった。デザインとして残ったのは、せいぜい表紙だけ。本体については、電子書籍リーダーとしての統一的な基本フォーマット、もしくは、読者自身が、自分の好み、自分の気分で、デザインを選べる。商品としての本は、純粋にテキストデータのおもしろさだけで勝負することになる。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 芸術学部 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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