電子書籍の仇敵は図書館

2013.06.06

ライフ・ソーシャル

電子書籍の仇敵は図書館

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 芸術学部 哲学教授

/本をタダで貸す公共図書館は、ネット上のDVDのパクリと同じ。いくら著者や出版社が読者のためを考えて、あえて苦渋を飲んで文庫化や電子化でコストを抑えても、それを盗み、タダでみんなにばらまくやつらがいては、どうにもならない。/

付記(2013.6.7)

 うーん、なんでこんな常識的な話にアクセスが多いのか、驚いている。かのバカ発見器などを見ると、図書館関係者だの、専門研究者だのでさえ、まったく時代錯誤な不勉強なことを書いているのを見つけ、まさにバカ発見器なのだなぁ、と、これまた感心。いや、ひょっとすると、じつは連中も国際情勢の劇的変化をよく知っていて、高圧的態度で世間を騙し黙らして、ガラパゴス国の中での似非図書館の安穏な既得権を守ろうとしているのか?

 図書館と著作権の相克の問題(公共貸与権)は、ヨーロッパでは百年も前から議論にあがり、戦後、次々と法制化され、英連邦、さらに92年にはECでも承認されている。いまだに揉めているのは、泥坊上等のイタリアくらい。その一方で、研究教育その他のフェアユースについても強力な権限を付与し、権利義務の双方から厳格運用が図られている。(たとえば、こんな感じ。http://blog.livedoor.jp/sumioka_t/archives/51300103.html)

 日本は、昨年に著作権法が改正(改悪)されたにもかかわらず、ダブルスタンダードのままで、DVDなどについては貸与や複製に補償制度を認め、かつ、それ以外のデータ操作については刑事罰を持って臨む一方、図書は、あくまでモノとして、そのまま放置された。(著作権法26条の3および附則4条の2)しかし、音声や動画も含みうる電子書籍の登場普及によって、DVDと図書のカテゴリー区別の方便は、もはや不可能となりつつある。

 図書館によって本の売上もプラスになる、だからいいんだ、というような屁理屈が許されるのであれば、同じ論理で、映画や音楽のネット上での複製も認めなければならない。そもそも、たとえ売上がプラスになるとしても、文化普及を名目に出版側には再販制度によってむりやり全国一律の定価維持を強制しておきながら、血税で建てた図書館では地元民の御機嫌取りに無料でそれをばらまき、きちんと本を自前で購入する善意善良な読者にはその定価のみならず消費税まで追加請求する、ということが、文化的に、また、政治的、経済的に「公正」か。こんな正直者がバカを見るようなしくみは、正規の本の読者を愚弄していないか。

 また、貧窮者を含めた国民の文化的水準としての保証、という理屈も、日本は、生活保護が充実し、そちらで文化費相当が現金支給されている以上、図書館無料の根拠となりえない。他方、公共ホールのコンサート、公共体育館のプール、など、利用者の本人負担が当然となっていることなど、現代の日本の諸制度の全体的構成を鑑みて、いまだに公共図書館の本の利用のみが完全無料である根拠を探す方が難しい。そもそも図書館が無料で本を提供できてしまうのは、図書館が相応の著作コストを負担せず、他人のものを「盗用」しているからではないのか。(19世紀までのように、著作が図書館の支援なしには不可能であったのであれば、図書館を媒介に、前世代からの無料の恩恵を次世代に無料で還元する、という理屈も成り立っていた。だが、いまの雑本だらけの通俗図書館はもはやその用をなさず、また、その「読者」とやらは、消費するだけで、なにも図書館には還元しない。)

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 芸術学部 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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