ユニーク!「ターゲットを絞らない」ダウンウェアの戦略!

2012.11.25

営業・マーケティング

ユニーク!「ターゲットを絞らない」ダウンウェアの戦略!

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 「YOSOOU(粧う)」。この和風な名前は、この冬2シーズン目を迎えたダウンウェアのブランドだ。しかし、よくあるダウンを看板にしたカジュアルブランドとは異なる。コートだけでなく、ジャケットからトレンチコート、スカートやドレス、それにボウタイまですべてダウン入りという商品展開をしている「何でもダウンで作る」ブランドなのだ。ユニークなブランドの狙いを 株式会社パブリックスペース・永嶌社長に聞いてきた。

 昨年の冬、誕生したばかりの「YOSOOU(粧う)」は大いに売れた。同ブランドの売り物はダウンだけなので、展開は秋冬のみ。
百貨店を中心に13回のリミテッドショップと全国15店舗のセレクトショップへの展開で1億3千万円の売上記録。
アパレル冬の時代において大健闘であるといえるだろう。今年はさらに規模を拡大し、百貨店・セレクトショップなど26カ所30回のリミテッドショップで3億円の売上を見込んでいるという。

 勢いを増すYOSOOUブランドであるが、その「売れるしくみ」は明確だ。Product(製品)は、「Dual Flex」というダウンには珍しい伸縮性のある生地を開発し、使用している。それによって、ダウンウェアにありがちなガッチリした着ぶくれシルエットではなく、身体にフィットした「街着」として違和感のないスマートなスタイルに仕上がっている。それだけではなく、伸縮性素材は「体型を選ばない」というメリットを生んでいる。
 「YOSOOU(粧う)」は家族全員が着回せる服。年齢や体型を選ばない服を目指している」と永嶌社長は語った。
確かにカタログやWebサイトでは様々な一般人モデルがYOSOOUのダウンを楽しげに着回している。気に入ったら誰でも無理なく手に入れられるという価格(Price)設定として、3万円台~4万円台が中心。販売チャネル(Place)として、点での展開ではなく「YOSOOU(粧う)」の世界を表現できるよう期間限定のイベントショップでの販売を中心にし、それが結果として固定費の抑制につながっている。また一過性ではなく3年、5年と年を重ねるごとに徐々に浸透していくブランドでありたいという意味で、マス広告を打たず、口コミやパブリシティーを中心としたPromotion展開にもそのポリシーは反映されている。
 つまり、YOSOOUは「ターゲットをあえて絞らないという戦略」の元に、マーケティングの4Pの整合性を図っているのである。

 ターゲットを絞らないというなら、ユニクロのダウンがその代表格と思う向きもあるだろう。確かに、カジュアルウェアという戦場においては、ユニクロが「ウルトラライトダウン」を昨年の700万枚に対して2012年は1300万枚という販売目標を掲げている。製造数が多くなることによって工場設備費などの固定比率が低減し、より低コストで勝負できる「規模の経済」を効かせた「コストリーダー」の戦い方だ。安価で無難なスタイル。誰にでも買う事ができる。
 しかし、誰も彼もが着ている商品では満足できない層も存在する。一方では、スポーツメーカー・ゴールドウィンの「ノースフェイス」などのブランドは、価格では勝負できないものの、完全な防水「ゴアテックス」などの機能的差別化を図る「差別化戦略」戦略を強めている。「モンクレール」などもプレミアムダウンを用いた10万円オーバーの商品を展開している。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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