根本的に間違っている就活と就職支援

2012.10.31

組織・人材

根本的に間違っている就活と就職支援

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

情報入手が容易になり、選択肢が増えた時代の正しい就職活動とは。

いくつかの選択肢に対して、勘に頼っていい加減に選んだ結果と、吟味を重ねて選んだ結果は、どちらが正しくなるだろうか。選ぶのに必要な情報がモレなく揃っており、それを処理・判断する能力があり、得た情報がその後も変わったりしないときには、いい加減に選ぶよりも、吟味を重ねた方が正しい選択となる。

しかし、情報にモレがあったり、それを処理・判断する能力に欠けていたり、その情報が後で変わるようなことがあったりするなら、いくら吟味しても正しく選択することはできない。解くために必要な知識を持たない問題が出たら、考えて選択しても、鉛筆を転がしても結果は似たようなものになるのと同じである。

悪いことに、吟味にかけた時間や労力が大きければ大きいほど、選択を間違ったことに対する後悔が大きくなる。鉛筆を転がして決めた場合よりも、真面目に考えて決めた場合のほうが、「正解できたかもしれないのに・・・」と考えてしまう。鉛筆を転がして決めたのなら、間違っても仕方ないと割り切るしかない。

選択肢を増やすと、余計にこの傾向が強まる。選択肢が増えれば増えるほど必要な情報も増えていき、処理・判断する能力が求められるので、正解する可能性は低くなる。選択肢が少なければ正解できたのに、目移りしたり、迷っている間に時間がなくなったりして、間違うようなことも起こる。後で選択を悔やむ可能性も高まる。だから、選択肢が多い状況も潤沢に情報があることも、幸せとは言えない。

新卒の就職活動では、「出来る限り沢山の情報を収集し、積極的に会社訪問などを行い、自分の適性も見極めた上で、“いい会社”を選択しよう。」という考えが支配的だ。大学も活動量を増やしなさいと指導するし、とにかく多くの会社にエントリーしようとする学生も多い。一見マトモで、そのような姿勢の方が適切な選択をできるように思われる。

しかし、現実は逆だ。昔に比べて、はるかに熱心に会社選びをしているのだから、昔より間違いのない選択ができるように思われるが、例えば、入社3年以内に退社する割合が、鉛筆転がしのような会社選びをしていた頃に比べて10%程度増えているように、ミスマッチが問題となっている。

会社に関する情報は、社長や広報とリアルに会話を重ねているアナリストでさえ、その入手も判断も難しい。また会社は、いくらでも変化をし続ける。だから、就職に当たって会社を吟味しているつもりでも、実際にはかなりの情報不足で、それも相当に不確かな情報をもとに判断するのだから、結果は、いい加減な選択と同じようになるのは当然だ。情報にモレがあったり、得た情報を処理・判断する能力に欠けていたり、その情報が後で変わるようなことがあったりするなら、吟味しても正しい選択はできないのである。

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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

「高齢社会、高齢期のライフスタイル」と「組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革など」)をテーマとした講演を行っています。

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