高値売りの「ヤマグチ」

2012.10.05

営業・マーケティング

高値売りの「ヤマグチ」

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

「返報性の原理」を徹底することにより、粗利率39%を達成している街の電器屋さん、「でんかのヤマグチ」は、顧客管理も徹底して行なっているんですね。

マスメディアでも頻繁に取り上げられている、町田市のパナソニック専売店、

「でんかのヤマグチ」

は、既存客にとことん奉仕することで、

「高値」(大型家電だと量販店・ネット通販より10万円高いこともある!)

でも購入してもらえる親密な関係を形成・維持しています。

日経MJの最新記事(2012/10/05)によれば、営業担当社員12名がそれぞれ400-500世帯を担当しているということなので、現顧客数は6千人前後なのでしょうか・・・

顧客管理を開始した10数年前は3万4千人、2011年時点では1万2千人ということでしたから、上記6千人というのは、全顧客リスト1万2千人のうち、営業担当者が親密な関係を保っているお客さんの数なのかもしれません。

ヤマグチの営業担当は、自分の担当家庭にある家電品の状況をきっちり把握しているだけでなく、お客さん外出時の留守番、旅行中の水遣り、飼い犬の散歩などを月数回引き受けており、まるで

「何でも屋さん」

のようなサービスを無料で行なっています。

これは、電球の取り付けなど、家電品購入に伴う本来のサービスとは異なるものですから、

「裏サービス」

と呼ばれているようです。

これはまさに

「返報性の原理」(相手の喜ぶことをまず提供することによって、相手に「借りを返さなきゃ」と感じさせること)

の活用であり、結果的に

「遠くの親戚より、近くのヤマグチ。買い物だけの付き合いじゃないからこそ買い物する」

とまでお客さんに言わせることができるわけです。

さて、ヤマグチの顧客管理も徹底したものです。

まず、クレームが多い客、極端な値引きを求めるお客さんはリストから除外します。

そして、各顧客の

・累計購入金額
・最終購入時期

をそれぞれ3段階にセグメントして

9つのマトリックス

をつくり、各マトリックスへのアプローチ方法を最適化しています。

ちなみに、累計購入金額は以下の3段階にセグメント。

・100万円以上
・30万円~100万円
・30万円未満

最終購入時期のセグメントは以下の3段階です。

・1年未満
・1年以上3年未満
・3年以上5年未満

なお、最終購入日が5年以上前のお客さんは、どんなに馴染みでも顧客リストから外すことで、可能な限り、顧客リストをアクティブな状態に維持しているようですね。

ヤマグチでは、9つのマトリックスのうち、「最上客」とでも呼べる

「1年以内に購入し、累計購入金額100万円以上」

のお客さんについては、重点的に訪問営業やDM配布を行なっています。

次のページそれでも、毎月60-70世帯が新規客として増加している...

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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