ACTA続報

2012.10.01

IT・WEB

ACTA続報

トッテン ビル
株式会社アシスト 代表取締役会長

2012年7月、欧州連合(EU)の立法議会である欧州議会は、「Anti-Counterfeiting Trade Agreement(ACTA:模倣品・海賊版拡散防止条約)」を圧倒的反対多数で否決した。

ACTAは知的財産権の保護に関する国際条約で、2010年に日本がリーダーシップをとって起草され、2011年10月には日本、米国、オーストラリア、カナダ、韓国、シンガポール、ニュージーランド、モロッコの8カ国が署名をした。2012年1月にはEUも承認したが、ACTAがインターネットの自由を侵害することにつながる恐れがあるとして、ヨーロッパでは議会メンバーへ嘆願や批准否決の請願書が提出されるなど広範な反対運動がおきたため、欧州議会はACTAを批准しないことを決定したのである。

日本では、TPPと同様にこのACTAも国民に秘密で交渉が進められ、去る9月6日、衆議院本会議であっという間にACTAの締結が承認された。そもそも中国が参加していないし今後参加する見込みのないACTAに、模倣品・海賊版対策の実効性はない。それにもかかわらず、日本政府はその締結を急いだのだ。

コンピュータ業界でACTAに反対する組織の一つに、アメリカのフリーソフトウェア財団がある。フリーソフトウェア財団は文字通りフリーソフトウェアを推進しているが、ACTAによってインターネット・サービス・プロバイダーがフリーソフトウェアを公開できないようになるため、事実上「自由」を脅かすものだと主張している。

たとえばフリーソフトといえば、Linux、Apache、Firefoxなど多数があるが、パソコンで映像や音声を再生したり保存するのに使われるのがコーデックで、Opusというフリーソフトウェアがある。Opusは、IETF、Mozilla、 Microsoft (Skype買収により)、 Google等々の共同作業によって作られ、その品質はMP3をしのぐとされる。開発にあたっては特許侵害で訴えられることがないよう、現場で長い間使われてきたプロセスや方法を使って作られてきたという。ACTAによって阻止したいのは、まさにこうした優れたフリーソフトウェアが市場に多く出回ることなのだ。言い換えると、たとえ技術革新が妨げられても、知的所有権、特許権によって自分の利益を確保することを何よりも優先したい組織がACTAやTPPを後押ししている。

TPPといいACTAといい、グローバル大企業による秘密交渉で決められている協定はあきらかに報道管制されており、実質インターネットが唯一の情報源だ。したがってインターネット自体を封じ込むことが、目的の一つとなっている。いまやインターネットは、テレビ局、新聞社、広告代理店、出版社の収益を侵食するライバルであるため、標的はその競合相手の個人インターネットユーザーである。そして究極は自由な言論の統制であろう。

とにかく日本はACTAを批准した最初の国になったが、日本だけが批准しても残りの国が否決すれば多国間条約であるACTAは発効しない。そうなることに希望を託そう。

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トッテン ビル

株式会社アシスト 代表取締役会長

1969年、米国の大手ソフトウェア会社の一社員として市場調査のために初来日し、1972年、パッケージ・ソフトウェア販売会社アシストを設立、代表取締役に就任。2006年、日本に帰化し日本国籍取得。2012年、代表取締役会長に就任。

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