転職の3動機~現職を「卒業する・去る・逃げる」

2012.05.11

仕事術

転職の3動機~現職を「卒業する・去る・逃げる」

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

「転職」という選択肢は、いわば“ワイルドカード”であり、ハイリスク・ハイリターンである。自分の動機がどこにあるのかをしっかり認識して、そのカードを切る/切らないを考えたい。

 「この会社もう辞めようかな」「こんな仕事に切りをつけて転職したほうがいいかな」と思ったとき、選択肢は4つです。

  〈A〉留まる
   ・1:現職場で「我慢する」
   ・2:現職場で「奮起する」
  〈B〉動く
   ・3:社内で「異動する」
   ・4:社外へ「転職する」

◆「留まる」のも立派な選択肢
 最も簡単でリスクの少ない選択肢は、現在の環境で我慢し、様子見することです。しばらく我慢すれば、「いやな上司も代わるかもしれないし、会社の空気も変わるかもしれない」、「そもそもほかに行けるところもないしなぁ」といった受身の対応です。自分のキャリアをどうしたいかという主体的な意志が弱い場合は、ヘタに動かずにいたほうがいいというのは処世術として正しいかもしれません。ただ、仕事が苦役であり、ストレスの蓄積に耐えるばかりの人生でいいのかという大きな自問は残ります。
 一方、そこに留まって現在の環境を主体的に変えるという勇敢で賢明な選択肢もあります。昔から「石の上にも3年」とあるように、1つの仕事、1つの組織に丸3年かかわっていると、いろいろなものがみえてきますし、身についてきます。不思議なことに、丸2年と丸3年の差は大きいものです。2年ではみえなかったものが、3年いると忽然とみえてくるものが多いのは、過去から大勢の人が経験するところです。

◆転職の前に「展職」を試みよ
 私は、企業の研修などで「転職というワイルドカードを切る前に、どれだけ“展職”を試みていますか」と、受講者に質問を投げかけています。
「展」とは、「展(の)ばす・展(の)べる」などと訓読みし、広げる、広がるといった意味です。つまり「展職」とは、いま自分が行なっている職・仕事の可能性を広げ、進化・発展させていくことをいいます。
いま目の前にある仕事が、つまらないものだと思えばいつまでたってもつまらないもののままです。自分の能力とミスマッチ(不適合)だと思えば、いつまでもミスマッチのままです。しかし、どんな仕事にも進化・発展の余地はあるはずだと思ってやれば、どこまでも進化・発展する可能性があり、面白さが発掘できます。また、自分自身も仕事や環境に馴染むように変えていける可能性は十分にあります。

 演劇の世界に、次のような言い方があります。
 ───「小さな役はない。小さな役者がいるだけだ」。

 こんな会社、こんな仕事と思っても、そこで、留まる勇気を出し、与えられた環境の中で最大限その仕事を大きく引き伸ばす挑戦をすることは、立派な選択肢です。そこで何らかの結果を出してから、次の舞台を考えても遅くはないのです。むしろ、そこで結果を出してからのほうが、かえってよい職業人生をつくる経路となることがあるのも事実です。
 ネット販売会社Amazon.co.jpの立ち上げ期に本のバイヤーとして活躍された土井英司さんは、著書『「伝説の社員」になれ!』で、まさにその点を忠告してくれています。 ───「転職は、今いる会社で実績を積み、「伝説」をつくってからでも遅くはありません。いや、実績を積んだときはじめて、転職するもしないも自由な身になれるのです」と。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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