メタボ狂想曲を考える

2007.11.07

ライフ・ソーシャル

メタボ狂想曲を考える

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

マクドナルドの牛肉パテ4枚「メガマック」。すきやの牛の具3倍「メガ牛丼」。他にも持ち帰りやコンビニの弁当やでは、ボリュームのあるおかずがダブルに入っているメニューが多数、登場している。 それらのメニューが次々と上市されるのは、市場の強い要請があるからに他ならない。 そして、さらに危険なのが飲食店のランチメニューが「ガッツリ系」になってきていることだ。

関東人からするとお好み焼きや、焼きそばにご飯が付く、関西風「炭水化物定食」はなかなかガッツがいるものだったが、最近の流行はそんなカワイイものではないようだ。
弁当に習って「おかず二倍」。
先日洋食屋で食べたランチセットは「ドミグラソース・ハンバーグとサルサソース・チキングリル」。
脈絡のない二品が皿の上でサラダを挟んで牽制しあっていた。
昨日のランチは丼とうどんの店。
ランチのセットは「丼ORうどん」ではなく、全て「丼ANDうどん」。二倍だ。
しかもカレーうどんと味噌カツがお勧めらしく、味噌カツ丼と小カレーうどん(小といってもかなりボリュームあり)のセットが一押しでメニュー表示されている。総カロリー数は恐ろしくて想像もできない。

ファストフィードや弁当、ランチの「メガメニュー」や「二倍メニュー」は言うまでもなく「メタボ撲滅運動」の反動だろう。
やはり、ものごと、何らかの働きかけをすると、その「反作用」が起る。
働きかけが大きいほど、反作用も大きくなる。
男性のメタボリックと判定されるウエストサイズが85センチなのか、90センチなのかが激論の末、厳しい85センチのままに落ち着いた。
来年度からは企業は社員の健康管理、メタボリック防止も制度化される。
こうした厳しさがより大きな反動を生んでいるのは想像に難くない。

メタボリックシンドロームと、それによって引き起こされる様々な疾病が啓発されることは歓迎すべきことだろう。
しかし、一方で「疾病啓発」は実は「病気のマーケティング」となる側面も見落とせない。
世間の人々、例えばある程度の年齢以上の人ならば、概ね当てはまるような事項をもって、「病気、もしくはその予備軍です」と断定する。疾病啓発によって「病は作れる」のである。
さらに、その断定する基準を厳しくすればするほど、マーケットは拡大する。しかも予防が法制化されるとあっては、巨大マーケットが出現することになるのだ。
逆に基準を緩くすることは、その市場をシュリンクさせることになる。

メタボを巡るこの狂想曲とも言うべき悲喜こもごも。
「たべた~い、でも、やせた~い」という名コピーでかつて女性向けダイエット食品が一世を風靡したが、世の男性はあまり我慢ならずに喰ってしまうようだ。
あまりに反作用が大きくならないように、適正な疾病啓発と、市場形成がなされることを願って止まない。
・・・最近はけなくなった30インチのジーンズを前にして。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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