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「知っている」が学ぶ心を妨げる

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
村山 昇/人事/組織
4.8
3,119
2011年8月28日 13:16

私たちは「ああ、それなら知ってるよ」と思ったとたん、それ以降の「考えること」をしなくなります。そして、もっと知らない知識・もっと目新しい情報を欲しがります。3・11以降の日本人は知識の狩猟を超えて、観念の耕作に喜びを見いだせるか───

 企業研修を行うと、たいてい主催の人事部(人材育成担当)は受講者(社員)に事後アンケートを取ります。そのアンケート結果は、研修プログラムの開発者であり講師である私にとっては、いわば成績表のようなもので、良い評価であれば励みにし、意見やクレーム・批評のようなものがあれば改善要求書ととらえて参考にします。いずれも見るのは楽しみです。しかし、そんな中で残念な感想というのがあります。それは例えば―――

  「わかりきった内容のことが多かった」
  「どこかで聞いたような話だった」
  「1日拘束されてやるほどの情報量がなかった」
  「理論的に目新しいものではない」
  「実際の業務には使えない」……といった類のものです。

 もちろん私も、このような声が出ないよう、もっと知的満足を与える改善をして努力を重ねるわけですが、このような類の感想はどうしても出てしまうのです。その理由は「知識が学ぶ心を妨げている」からです。きょうはそのことについて書きましょう。

 私が行う『プロフェッショナルシップ(一個のプロであるための基盤意識醸成)研修』は仕事やキャリア形成に関わるマインド・観を涵養する内容ですので、いわゆる知識習得・実務スキル習得ではありません。働く上での原理原則の観念をさまざまに肚に植え付けること、そして思索・内省の脳を大いに動かすことを狙いとしています。
 私は「観念が仕事をつくり、観念が人をつくる」と確信しています。さらには、観念は価値を生み出す基となるものであり、観念は人を結びつけるものであるとも確信しています。例えば私が紹介する観念は―――

  「心が変われば、行動が変わる。
  行動が変われば、習慣が変わる。
  習慣が変われば、人格が変わる。
  人格が変われば、運命が変わる」。 

  (星稜高校野球部・山下智茂監督の指導書き)

 あるいは、
  「悲観は感情に属し、楽観は意志に属する」。(アラン:仏哲学者)

 または、
  「チャンスは心構えをした者に微笑む」。(パスツール:科学者)

といったようなものです。これらわずか一文に表された観念を肚に落としてもらうために、ワークをやり、ゲームをやり、ディスカッションをやり、1日とか2日とかの研修プログラムをこしらえます。
 原理原則を含んだ観念というのは、古典的な言い回しです。当然それらは一読して当たり前の内容であり、新規性のある情報や理論は含んでおらず、地味で説教じみたものです。そんなとき、「心が変われば運命が変わる? まぁ、教訓としてはそうだよね」、「ああ、その言葉、聞いたことある、知ってる。(で、それが何?)」、「チャンスは努力しないと来ないってことでしょ。はいはい、わかってます。(で、明日から使えそうな具体的ハウツーは何か教えてくれるの?)」……受講者の中で「知識狩り」「ハウツー情報狩り」の人の感想はこうなりがちです。

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