ペットボトルのキャップ共通化に見る震災後のSCの行方

2011.04.27

経営・マネジメント

ペットボトルのキャップ共通化に見る震災後のSCの行方

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

経営、マネジメントに携わる者にとっての最近の関心事の一つに、東日本大震災後、調達品の需給バランス、サプライチェーン(SC)がどう変わるのかというものがある。正直、現段階で答えがある訳ではないが、今回は、それを見極める上での参考になりそうなペットボトルのキャップ共通化を例に、その方向性について考察する。

東日本大震災ならびにその後の福島第一原発事故により、PETボトル入りのミネラルウォーターの需要が急激に増加し、PETボトル用キャップの供給が不足しミネラルウォーターの供給のボトルネックとなっていることを受け、社団法人 全国清涼飲料工業会は、PETボトル用キャップの白無地キャップへの統一を決めた。

これは簡単なことに見えるが、飲料メーカにとってもキャップサプライヤにとっても難しい判断であったであろう。キャップの機能というと、中身の飲料の品質を保つため位に考えている消費者も多いかもしれないが、飲料メーカから見た時には、それのみならず、商品がどういったものかやブランドとして認知してもらうための情報伝達や販促の機能を持っている。キャップは中身が傷まない、こぼれなければ良いと考えている先の消費者であっても、実際には、キャップの色、デザイン、シンボルマークに自分が気づかぬ内に影響されて商品を買っていることもある。だから、飲料メーカは、ボトル本体でなく、キャップにも拘りを持って商品を企画している。色やシンボルマークをつけられないとなると白無地キャップとなると、これまでのキャップの機能を落とすことになる。

今回の共通化のきっかけは主要キャップメーカ3社より、自らの工場被災もあり、需要の急増に対応できないとの申し出があったことからだが、サプライヤにしてみても、白無地がペットボトルのキャップの標準規格となってしまえば差別化の余地が減らされ、価格競争しかなくなってしまう。だからこそ、飲料メーカもサプライヤも様々なキャップのサイズ、デザイン、色を考え、提案し、日本のペットボトルのキャップだけで200~300種類とあるといわれるだけの数になっているのであり、今回のキャップ共通化の期間が被災キャップ工場が復旧し供給が整うまでと予定されているのである。

仕様の標準化、簡素化。調達・購買担当者としては、本来こうした動きは平常時にこちらか仕掛けなけれなければならないものだ。しかし、売上への影響を恐れて誰もなかなか手をつけられない。今回の震災対応でその壁を一つ越えた訳だ。

被災キャップ工場の復旧後、元の仕様に戻すのか、白無地のキャップを採用するかは各社の戦略に委ねられるが、少なくとも、仕様を標準化、簡素化すると売上にどのような影響が出るかというある程度のデータは得られている。競合他社も白無地のキャップを採用しているので、実際の競争下のものではないが、仕様の標準化、簡素化の是非について検討する上で、やってみなければ分からないという感覚的なものを一つ超えた議論ができるようになっている。仕様の標準化、簡素化のコスト削減メリットは明らかだ。加えて、今回の震災を踏まえて、仕様の標準化、簡素化は事故や災害に負けない柔軟なサプライチェーンづくりにも役立つことが明らかとなった。

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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