民放ビジネスモデルの終焉

2010.11.22

IT・WEB

民放ビジネスモデルの終焉

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 芸術学部 哲学教授

/民法連は、電機メーカーのCM飛ばしに圧力をかけるつもりだそうだが、すでに地上波よりもケーブルの方が優勢であり、電機メーカーはもちろん、番組制作会社、視聴者、そしてスポンサーも、後者に乗り換えようとしている。電機メーカーが地上波チューナーの販促を止めて困るのは、むしろ民法連の方ではないのか。/

 日本民間放送連盟(民放連)の広瀬道貞会長は11月19日の定例記者会見で、電機各社がテレビCMを自動的に飛ばす機器を販売していることについて「看過するつもりはない。メーカー側と厳しく折衝する」と述べたそうだが、視聴者の方が、CMを、さらには、地上波そのものをもはや「看過」しているのに、いったい何を勘違いしているのだろうか。

 高速道路ができれば、旧道のドライブインはさびれる。だからと言って、ドライブイン会の会長が、自動車メーカーに圧力をかけ、高速道路を走れないように自動車の速度性能を落とせ、などと言えば、何をとんちんかんな、ということになるだろう。

 電機メーカーからすれば、ごちゃごちゃ言うなら、テレビから地上波チューナーを外すぞ、ということになるだけだ。実際、ケーブル世帯からすれば、テレビの地上波チューナーなど、まったく使わない余計な機能であるにもかかわらず、一般に「抱き合わせ販売」されており、このことの方が独占禁止法に抵触する虞(おそれ)がある。現に、1992年の著作権法改正で導入された私的録音録画補償金制度に関して、パナソニックや東芝は、電子情報技術産業協会に従って、2009年から地上波チューナー外しという対抗策で、その支払いを拒否してしまっている。これらのメーカーは、すでにケーブルチューナー(STB、セットトップボックス)でシェアを拡大しており、落ち目の地上波の民放連などに義理立てして無理心中するより、ケーブルと次世代放送へビジネス展開する方が戦略的に得策だ、と考えている。

 デジタルか、アナログか、という以前に、地上波テレビ局は、マーケティングとして、この二十年の市場動向を読み間違え、経営的に失策を重ねてしまった。もともとテレビなどほとんど見ない新聞社からの天下りがテレビ局を経営することに無理があったのだろう。また、市場そのものが、ネットやケーブルの登場で激変してしまった。もはや10分ごとに2分ものCMが入るような番組フォーマットは、現代の視聴者の感性に適合していない。ザッピングでチャンネルを変え、それでもどこもCMばかりであるために、地上波からケーブルに切り替えていってしまう。いまだに地上波に残っている視聴者は、いまだにケーブルも導入しないような一般購買意欲の低い人々ばかりで、スポンサーとしても、地上波にCMを打つ魅力がもはやほとんどない。

 一方、ケーブル放送局は、視聴料を主たる収入源としている。番組の間にCMも入れているが、チャンネルごとの視聴者層がはっきりしており、視聴率の割にCM効果は高い。住友商事とKDDIによるJCOMグループの場合、2010年10月末で、ケーブル加入者は全国266万世帯。そのうえ、第二位のJCNグループも、じつは同じKDDI傘下にあり、すでに関東の過半数の55%の世帯に、このどちらかのケーブルが敷設されている。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 芸術学部 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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