金にならずともサステイナビリティ。米国包装産業の覚悟

2010.11.12

経営・マネジメント

金にならずともサステイナビリティ。米国包装産業の覚悟

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

米国の事例になるが、包装産業においてサステイナビリティ(環境保全と経済性を調和させた持続的成長)への取組がサプライヤや商品選定において重要な要素となっていることが明らかにされた。他にも包装業界におけるサステイナビリティの取組を進めていく上での課題も明らかになっているので、今回は、この調査結果についてご紹介する。

この調査は、パッケージング業界の情報誌Packaging Digestと米国の環境負荷低減を目指す包装産業の業界団体Sustainable Packaging Coalitionにより2010年10月に実施され、今年で4回目。包装会社のみならず、素材、包装機械、消費財メーカ、小売など幅広い包装産業関係者から630の回答を得ている。

約2/3の回答者が包装に関わる意思決定においてサステイナブルなデザインが重要な要素となっている、約2/3の回答者が自社が、61%の回答者がお客様がサステイナビリティにより重きを置くようになっていると回答。

また、この4年間の変化として、包装業界において環境問題についての知識が増加、取組に質的な変化が起こっており、包装業界関係者の関心が「サステイナビリティとは?」からサステイナブルな素材やデザインの選定や「自分達の成果をいかに効果的に測定するか?」に進化していることを挙げている。サステイナビリティに取り組まなければならないと認識しているとの回答が、2007年の53%から今回は98%へと増加、サステイナビリティについて知らないという回答が2007年の10%から本調査では2%へと減少しており、非常に急速にサステイナビリティが業界のテーマとして浸透したことが伺える。

サステイナビリティでリーダーシップ示している企業として、小売ではWalmartが、消費財メーカではプロクター&ギャンブル(P&G)がそれぞれ最も得票を集めた。素材や設備メーカでは、環境負荷を低減する商品を提供するサプライヤが増えてはいるものの、そうした取組の認知度は小売や消費財メーカに比べると低く、87%がサプライヤ企業の中でサステイナビリティのリーダー企業のイメージを有しているものはいないと回答。

サステイナビリティへの取組の課題として挙げられたのが「グリーンウォッシング(環境負荷低減効果がないにも関わらず地球に優しいと騙る行為)。」81%の回答者があまりにも多くの企業がグリーンウォッシングであると批判。回答者の一人は、こうした現状に対し「グリーンウオッシングがあまりにも巷にあふれ、真摯に環境負荷低減に取り組んでいる企業の努力がその中に埋没してしまっている。消費者は『エコ疲れ』『環境疲れ』にさいなまれている。真摯に環境負荷低減に取り組んでいる企業の努力が、安易に地球に優しいと騙る声にかき消されてしまうのは、非常に忌忌しき事態である」と懸念を示す。しかし、別の回答者は「こうした状況はサステイナビリティに取り組む上での前提と捉えておかなければいけないが、真摯な取組を進めている企業は何も恐れることはない、反対にこうした愚行が真摯な取組を進めている企業の立場を強くしてくれる。そうした企業は、自分達の従業員やお客様に対して実際に自分達の努力がどれだけの環境負荷低減の効果を挙げているか、実測値で啓蒙していけばよい。そうした努力がより多くの人に他者の幸福や地球、利益とのバランスを考えさせる正の循環につながる」とそうした状況に負けない姿勢を示している。

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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