生物多様性や生態系保全の経済価値は年400兆円 - TEEB最終報告書

2010.10.29

経営・マネジメント

生物多様性や生態系保全の経済価値は年400兆円 - TEEB最終報告書

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

生物多様性や生態系保全は大切だという事に反対する人は誰もいないだろう。しかし、実際にその取組はというと、まだまだ進んでいない。そんな現状に、「生物多様性や生態系保全の年400兆円の経済価値を生み出せる」と生態系保全の動きを異なる観点から後押しする調査報告書が国連環境会議から出された。今回はこのTEEB最終報告書を紹介する。

国連環境会議(UNEP)から「TEEB(2010)The Economics of Ecosystem and Biodiversity: Mainstreaming the Economics of Nature: A synthesis of the approach, conclusions and recommendatiosn of TEEB(生態系と生物多様性の経済学: 自然の経済学を社会の主流に: TEEBのアプローチ、結論と提言に関する最終報告書)」が公表された。TEEBは2年を掛けて様々な研究機関や大学から500人以上の専門家の協力を得てUNEPが行った調査である。

当報告書は、生態系や生物多様性の保全の経済価値を算出する試みで、幾つかの具体例を報告している。

- 現在の森林破壊を止めることにより、二酸化炭素排出量の増加を止めることでNPV(現在価値)換算で370兆円
- 乱獲により漁業では毎年4兆円が損失することに
- サンゴ礁の喪失で年間2兆4千億~1兆4千億円の損失
- 市街地への40万本の植林による冷房利用の抑制で5,400億円~1,600億円(4年間合計)
- 浄水プラントの建設を河川浄化サービスへの投資に切り替え、5,200億円の建設費用と年間320億円の操業費用を抑制
- 昆虫による農産物の受粉効果は17兆4千億、2005年の世界の農産物売上高の1割規模

名古屋で開催中の生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)では「生態系保全に年3兆6千億円を投じれば、長期的には水産資源の増加や温暖化防止効果などで年400兆円の経済価値を生み出せる(出所: 2010年10月21日 日本経済新聞 3面)」との試算も紹介されたようだ。ROIが100倍以上なことが、逆に数字の信憑性を失わせてしまうが、それだけ生態系保全、生物多様性は様々なところへの経済的波及効果があるということだろう。

TEEBの生態系や生物多様性の経済効果を測ろうとする試みには、

「生態系保全は金儲けと違う。その経済効果を測るなんて、生態系保全の崇高な理念を失わせる!」

「経済性を測れないものを見失わせる」

という批判もあるかもしれない。

でも、「自然は大切だ」「我われは地球に生かされている」と言うだけでは何も変わらない。いや、むしろ生態系の破壊が進んでいるのが現状だ。そうした事態を違う角度から改めようとするTEEBの試みは応援されてしかるべし。

TEEBの報告書でも、「生物多様性や生態系保全の経済性の測定は始まりに過ぎない。魚の乱獲がサンゴ礁の破壊につながり、その地域経済への損失が明らかにされても、魚の乱獲は抑制されない。それには、個々人一人ひとりの短期的利益思考や行政のそのような行動を促す制度・インセンティブ設計を改められなければならない。」と、報告書の限界を明らかにしている。

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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