リサイクル型店舗で持続的成長をビジネスモデルに

2010.10.15

経営・マネジメント

リサイクル型店舗で持続的成長をビジネスモデルに

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

セブン-イレブン・ジャパンは店舗の部材を再利用できる「リサイクル型店舗」を全国に広げる。リサイクルする段になってそれをどのようにリサイクルするかを考えても始まらない。持続的成長、環境経営の推進には、開発の段階から、それらを考慮してビジネスモデル、サプライチェーン全体を組み立てていかないと始まらない。このリサイクル型店舗の事例からその点について学ぶ。

「セブン-イレブン・ジャパンがトヨタホームと共同開発で開発したリサイクル型店舗は、閉鎖店の建物を分解、分解した屋根や壁、柱、看板などをクリーニングした後に、別の場所で新店として組み立てられるようにしたもの。

2008年に開業し今年春に閉鎖した店舗を再利用したケースでは、外壁を100%再利用するなど建物全体の約4分の3の部材が再利用された。この効果としては、環境配慮型店としてLED照明や太陽光発電パネルなどの設備を新規に加えたが、建設コストは新築より3割程度引き下げられたという。新店の電力消費量は先程の新たな設備投資により、従来よりも2割程度減るとのことだ。(参考:2010年10月7日付 日本経済新聞 11面)」

持続的成長にリサイクルが貢献する余地は大きい。しかし、リサイクルが行われるのは、その寿命が尽きてからなので、実際にリサイクルが行われるのは商品を提供してからずっと先。開発期間が数年掛かる商品であれば、その期間も加えたその先だ。

しかし、リサイクルする段になって初めてそれをどのようにリサイクルするかを考えても始まらない。商品開発の時からリサイクルを考慮した設計、素材の選定、リサイクルシステムの構築など、ビジネスモデルそのものを組み立てていかないと始まらない。

例えば、このリサイクル型店舗のケースでは、必ずしも出店と退店のスケジュールがピタリと重なるとは限らないので、分解後の部材を在庫として管理する必要が出てくる。また、再利用にあたっての強度検査なども必要であろう。

実際に2002年からセブン-イレブンはこのタイプの店舗を出店してきたが、これまで実際に移築されたケースがなく、この度、初めて出てきたようだ。この辺りの問題がまだ解決されていないのかもしれない。

それでも、チェーン店舗をリサイクル型にしていくメリットは大きそうだ。再利用による建設部材コストの低減だけではない。当然、リサイクルを進めていくには、店舗設計の標準化、部材の共通化を図らなければならず、これらの側面からのコスト低減効果も期待できる。当然、気軽にできる取組でないだけに、自社の環境経営のコミットメントを示すのにも有効だ。

小売業の店舗毎のスクラップ&ビルド、業態転換のスピードは早まっており、それに対応していく観点からも、出退店コストの低減、店舗の使い捨ての発想からの脱却が不可欠である。

こうした取組を成功させる鍵は、予め再利用することを織り込んで、開発、設計、原材料、部品の選定の段階から、モノ単体ではなく、ビジネスモデル、サプライチェーン、リサイクルチェーントータルを設計、組み立てていくことだ。これは簡単なことではないが、こうした視点を持つことは、競争優位性の確保、抜本的なコスト低減を図る上でも有効であり、トータルメリットで考えれば、こうした取組はきっと報われる。

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

フォロー フォローして中ノ森 清訓の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。