アップルのトラブルが問う「廃れないブランド」とは・・・?

2010.07.30

経営・マネジメント

アップルのトラブルが問う「廃れないブランド」とは・・・?

石塚 しのぶ
ダイナ・サーチ、インク 代表

アップルといえば、「反体制」、「非主流派」、「挑戦者」というかっこいいイメージで売ってきた。しかし、iPodが「一家に三台」といえるくらい普及し、時価総額がマイクロソフトを超え、世界最大のIT企業として君臨した今、アップルのブランド・イメージはどうなるのか?大きくなっても、主流化しても廃れないブランド力とは・・・?

庶民は往々にして、「挑戦する者」に加勢したくなる。一番手になってしまったら最後、応援のしがいがなくなる。また、どんなに画期的なモノやサービスでも、普及してしまったら「あたり前」になり、新鮮さや面白みを失う。こういう例は珍しくない。

アップルが、「アンチ・エスタブリッシュメント」であり、「革命的」であり、「自由」であり、常に「開拓者精神」を持ち続けるブランドとして信奉され続けるかどうかは、単に「画期的なモノ」をつくり続けることができるか否かではなく、まさにアップル社という共同体の一人ひとりが、そういった文化や精神、あるいは魂を持ち続けることができるか否かにかかってくるだろう。

アップル社の内部事情については知らないので、アップルのブランド力が単なる「イメージ」に依存するものなのか、あるいは筋の通った、実体を伴うものなのかどうかについて私が判断することはできない。しかし、その判決は市場が、顧客が下してくれるだろう。

それにしても、前述のiPhoneのトラブルについて、「他のスマートフォンにも起こること」と言ってしまうあたり、我々の知るかつての「アップル・スピリット」に既に反するのじゃないの、と個人的には思ってしまった。「反体制」であり、「挑戦者」であり、「とんがった」アップルであるからこそ、「iPhoneは他のスマートフォンとは違う」と突っ張り、問題の徹底的追及を約束して欲しかった。

かくいう私もiPadにはぞっこん惚れ込んでいる熱狂的ユーザーであり、商品開発者としてのアップルの先進性、画期性はまだまだ健在だと信じる。しかし、ブランドはモノでもなければ、看板でもない。だからこそ、アップルのブランドを背負うスティーブ・ジョブズをはじめ、「アップルの中の人々」が、その行動、言動をもってアップル・ブランドを生き抜いて欲しいものである。「廃れないブランド」の核とは、そこにあるのではないだろうか。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。

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