イノベーションの敵は常識。心臓の脈動で流体の輸送効率を2倍に

2010.07.22

経営・マネジメント

イノベーションの敵は常識。心臓の脈動で流体の輸送効率を2倍に

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

イノベーションの敵は、常に常識にあります。 これまで石油などのパイプライン輸送では、流す速度を一定にした方がよいと常識では考えられてきました。 しかし、そうした常識を覆して、流体の輸送効率を2倍以上にする技術が開発されました。今回は、この技術をご紹介します。

この技術は、東京農工大学の岩本薫特任准教授によって開発されました。これまでのパイプライン輸送の常識では、流す速度を一定にした方が効率的と考えられてきました。

パイプラインの流体輸送におけるエネルギー消費量の9割以上は乱流による摩擦抵抗が占めています。乱流は、流れの中に渦が生じて、まっすぐに流体が流れなくなる状態です。パイプラインの中では、管の中心付近は流れが速く、管の内壁近くの場所では流れが遅くなるため、乱流が生じます。

これまでこの乱流を減らすために、ポリマーや界面活性剤などを添加する方法や、リブレットと呼ばれる微小な突起をパイプ表面につける方法が考えられてきましたが、添加物を用いる方法は液体のみで気体輸送には使えない、輸送後の添加剤の除去が難しい、熱交換器へのコンタミの可能性など、リブレットではゴミが突起に詰まる、配管内の内壁面全面に設置する必要があるため初期コストが高いといった課題がありました。

岩本准教授は、ここで、流す速度を一定にすべきという常識から離れて、心臓の鼓動に着目します。心臓は、血液を送り出す際には、一定の速度では流しておらず、その鼓動により血液を流す速度を変化させています。生物の進化というのは合理的なもので、実は、これまでの常識と異なり、心臓のように流す速度を変化させた方が、効率は圧倒的に高かったのです。実証試験の結果、流れを心臓のように脈動させることで、最大約58%の動力削減効果、つまり2倍以上のエネルギー効率を達成したのです。

■この技術のメリット
1. 流体輸送効率を飛躍的に向上
ポンプ、曲がり部、段差から構成された室内実証試験で、最大約58%の動力削減効果を達成しています。

2. 導入コスト、ランニングコストが小さく、経済性が高い
今回開発された方法では、流体を流すためのポンプの制御方法を変更するのみで上記の輸送効率改善を可能にしています。導入コストは、リブレット方式が配管内の内壁全面への設置が必要なのに対して、今回の流体を脈動させる方法では、各所に設置されたポンプの変更のみです。

ランニングコストは、今回の流体脈動方式ではポンプの制御費のみなのに対して、添加物方式では添加剤のコスト、輸送後の転嫁剤の除去コスト、熱交換器へのコンタミの影響など、リブレット方式では、リブレットに溜まったゴミの除去費用が掛かります。

3. 気体輸送にも適用可能
今回の脈動方式は、添加物方式では難しかった天然ガス、水素、二酸化炭素などの気体輸送にも適用可能です。

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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