日本のサッカーを支える意外な「通信教育」

2010.07.05

組織・人材

日本のサッカーを支える意外な「通信教育」

木田 知廣
シンメトリー・ジャパン株式会社 代表

盛り上がりを見せるワールドカップ。何と言っても日本人が活躍してるのは嬉しくて… と言っても選手ではなく、「審判」の話。実はこちらでも日本人は頑張っています。 西村雄一氏は、主審としてオランダ-ブラジル戦でホイッスルを吹きました。レッドーカードを毅然と出していた姿が印象的ですし、プロからの評価も上々だったようで、同じ日本人として誇らしく感じちゃいます。

この西村氏の成功を影からサポートしたのが、「通信教育」…と聞くと、

えぇ?サッカーで通信教育かよ!と意外に思うかもしれませんが、良く聞いてみるとこれが意外とイケてるみたい。

教材として送られてきた微妙なプレーの動画を「受講生」たる審判が判断して、ディスカッションをしていくというもの。たしかにこれで精度は上がりそうですし、同時に審判の主観による判定のばらつきもなくなりそうです。

オランダ-ブラジル戦での毅然とした裁定ぶりには、このような教育に基づいた高いスキルと自信の裏打ちがあればこそでしょう。

ただ、一方で、ドイツ-イングランド戦のゴールシーンなど、「誤審」が続いているのもまた事実。そのような場合、批判の矛先はともすれば審判員個人に向きがちですが、それを言ってもしょうがないんじゃないかなーと個人的には思います。だって、上述の「通信講座」などの取り組みを聞くと、スキルアップの取り組みは十分なされているようで、一人ひとりの審判員を責めても事態は改善しそうにありません

むしろ、個々人のスキルを補完するためのシステムこそが必要なはずで、たとえばそれは、審判の人数増であり、コンピューターでの判定やビデオでのインスタントリプレイを導入など、個々人のスキルを組織として活かすための体制です。

そして、似たような事例は、実は私たちが働いている企業においても起こっています。筆者は企業における人材育成のサポートもお手伝いしていますが、いくら個々人がスキルアップ・マインドアップをしたとしても、「もうちょっと、実力を発揮するための環境を整えてあげた方がいいのでは?」と感じる時はあるものです。

人事系のキーワードは、「組織開発」と言い、英語のOrganizational Developmentの頭文字を取って「OD」と呼ばれることもありますが、まさにこのような個人を活かすための組織作りの方法論が必要ではないかと思うのです。すなわち、「人材開発」とともに「組織開発」が、ほんとうに成果の上がる企業をつくるのではないか…ワールドカップの審判問題を見るにつけ、そんな想いを強くしています。

ちなみに、組織開発に関しては、筆者のビジネススクール時代の恩師であるスマントラ・ゴシャール教授の下記の著作を読むことをお勧めしたいですね。ともすれば官僚的になりがちな大企業において「個」の力を解き放つ事例には胸が熱くなります。

スマントラ ゴシャール、クリストファー・A. バートレット、個を活かす企業―自己変革を続ける組織の条件

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木田 知廣

シンメトリー・ジャパン株式会社 代表

経営大学院立ち上げという類まれなる経験をした「人材育成のプロ」

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