苦しい時こそ筋を通す、今回騒動を巡るトヨタのサプライヤ対応

2010.04.21

経営・マネジメント

苦しい時こそ筋を通す、今回騒動を巡るトヨタのサプライヤ対応

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

内紛の噂まで飛び出してきたトヨタ自動車の今回の大規模リコール騒動ですが、トヨタは、この難局を無事乗り切ることができると見られます。 何を根拠にこんなことを言っているかというと、それは、リコール問題が拡大していく中での対象部品のサプライヤに対するトヨタの対応です。 今回は、トヨタのそうした対応についてご紹介します。

トヨタの今回の対応は、今後の問題解決や中長期的な組織としての調達・購買力の維持、改善にもつながります。問題解決は、そもそも、問題は何かを正確に認識することから始まります。社内はともかく、対外的に問題を安易にサプライヤに転嫁してしまったら、幾ら経営陣が社内に対して口酸っぱく言っても、社内の技術者、担当者はこの問題はサプライヤのものとして、真剣に取り組むことをせず、改善どころか、真の原因究明すらままなりません。

当然、その間、社内もサプライヤも責任のなすりつけ合いに陥り、不具合の真因究明、改良は進みません。お客様や潜在顧客から見れば、部品サプライヤに原因があるにしても、製品メーカにも設計、部品受入上の責任があると考えるのが普通ですので、その間の対応の遅れは、当然、製品メーカの信頼の喪失につながります。フォードとブリジストンファイアストンとのエクスプローラーのタイヤリコールをめぐる応酬が典型的な例です。

中長期的な組織としての調達・購買力の観点からは、フォードのブリジストンファイアストンへの対応、トヨタのCTSへの対応は、フォードとブリジストンファイアストンとの関係、トヨタのCTSとの関係に留まらず、今回のPurchasingの調査のように、フォード/トヨタ対全取引先との関係という構図で、幅広い既存取引先や潜在取引先から評価されます。

もし、フォードやトヨタがリコールで陥ったような状況の中で、買い手企業が自分の非を認めず、理不尽な対応をサプライヤに迫ったら、他の取引先を有する技術力・競争力を持つ優良なサプライヤ程、そうした買い手から離れ、そうした買い手に寄ってくるのは、他社と取引できない二流以下のサプライヤばかりとなってしまいます。

今回のトヨタのような大規模な一般報道がなくても、サプライヤに対する業界内での買い手企業の評判は、特に悪い噂は、すぐに広まります。意外と業界の中の人脈はつながっているものです。

人も企業も苦しい時に本性が現われるものです。ベンチャー企業にいるとこの言葉の意味がよく分かります。わたし達の力量不足もありますが、これまで付き合いのあった人でも大半の方が自分の元から去っていきます。お願いしても会ってもらえる数も減り、会えたとしても、自分達に関心を示してくれる方の数も減ります。それでも、企業の大きさや器に囚われずに、自分達の力量を正当に評価して下さる方も少なからずいるのも事実です。当然、こちらも、苦しい時に支えて下さっている方々に対しては、一生何があっても仕えていこうと考えますし、相手が苦境に陥れば、そうした時こそ恩返しすべきと考えます。

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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