クロマグロ禁輸案否決に喜んでばかりはいられない、それが示す先

2010.04.01

経営・マネジメント

クロマグロ禁輸案否決に喜んでばかりはいられない、それが示す先

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

ワシントン条約締約国会議で、大西洋・地中海産のクロマグロの国際取引を禁止する提案が、当初予想を覆して否決されました。 今回は、国際交渉の中で久々に日本の上手さが目立ったこともあり、関係者の間では、安堵の声や「クロマグロは日本の食文化の主張が認められた!」との戦勝ムードにも似た雰囲気が漂っていますが、今回の騒動を巡って浮かびあってきた課題について考えて行きます。

当件を巡っての外務報道官談話「大西洋クロマグロのワシントン条約附属書Ⅰ掲載提案の否決について」を見ると、否決を「歓迎」、「我が国の主張が国際社会の広範な支持を得た」、水産資源管理に向けて「国際社会におけるリーダーシップを発揮し」と勇ましい言葉が続きます。(出所:http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/22/dga_0325.html)

果たして、今回の結果は、岡田外相が記者会見で述べたような「クロマグロは広く子どもからお年寄りまで親しんでおり、日本の食文化に大きな存在感を示している。(出所:MSN産経ニュース 2010.3.16)」という食文化の議論が通用したのでしょうか?

報道によれば、アフリカ大西洋岸諸国へのマグロ漁業への技術支援、「何も手を打たなければ、いずれタラやニシンなどマグロ以外の魚種に波及しかねない」といったマグロ漁業に関係のない漁業国に対しての訴えかけ、ICCAT(大西洋まぐろ類保存国際委員会)による禁輸以外の手段による資源回復が実現可能といった日本の主張が認められたようです。(出所:日本経済新聞 2010年3月19日 1、3面)

食文化の保護というローカルな正義では、地球資源の管理という大義の前には、何ら効力を持ちません。特に、多数決で決まる国際会議の場では、文化というローカルな正義を持ち出せば持ち出す程、少数派に追いこまれ、あまり得策ではありません。

また、食文化の議論では、日本文化をクール・ジャパンとして売り出そうとしている日本政府にとって、「希少な魚類を自国の食文化を盾に食い尽くそうとしている」というマイナスイメージをもたらす可能性があります。それよりは、「もったいない」や「八百万の神」といった日本のモノを敬う、大切にする文化をアピールし、マグロ以外の水産資源も含めて、漁業を持続可能な産業として確立し、それを科学的に証明していった方がトータルの外交政策として効果的です。

赤松農林水産大臣は、今回のクロマグロ禁輸案否決を受け、「ICCATをはじめ各種の地域漁業管理機関において科学的資源評価を踏まえた的確な資源管理措置を決定し、各国がこれを確実に遵守する体制の確立に向けて、従来にもまして積極的なリーダーシップを発揮し、開発途上国との連携・協力も強化しつつ、乱獲防止の先頭に立ちたいと考えております。」との談話を発表しました。これが選挙の票目当ての安易な予算のばら蒔きや、新たな利権の温床として利用されない限りは、正しい見識です。

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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