人事異動を、どのように受け入れるべきか。

画像: photoACはむぱんさん

2010.03.10

組織・人材

人事異動を、どのように受け入れるべきか。

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

人事異動を決めた経営と本人の受け止め方が、どのように一致していれば、良い異動とすることができるか。

私自身はたまたま、人事異動の発令を受けた経験は多くはないのですが、人事部という発令する側の部署にいた関係で、その受け止められ方、異動後の活躍の度合い、本人の感想や周囲からの評判などを長く見てきておりますので、その経験を踏まえて、異動先に好影響を与えることや、異動を良いきっかけとして自らの価値を上げる、キャリアにつなげる人はどのようにそれを捉えるものなのか、について考えてみました。

「一からスタート」「とりあえずは勉強」と考える人は、大体うまくいきません。未経験だから、職場や業務のことを詳しく知らないからといって、自分が持っているものを活かそうというよりも、知ること、教えてもらうことに集中してしまうパターンです。

それが本心でない場合でも、まずは周りに馴染むことを目的にしてそのようなスタンスを取る人もいます。もちろん、全く逆の「過去は知らんが俺はこうする」といって学ぼうとしないのは問題があるでしょうが、あまりそういう人はいません。田舎に引越ししてきた都会人のように、はたまた転校生のように妙に謙虚になる人が多いのですが、こういう姿勢はうまくいかないものです。

「オレは飛ばされたのか」「それとも期待されて引っ張られたのか」などと異動の意図を考え過ぎ、後々まで引きずる人も少なくありませんが、これも良くありません。人事異動は確かに一大事かもしれませんが、なぜ自分がそこに・・・という理由がずっと気になってしまっているパターンです。

その異動を決めた人の意図があって、『その人の意図に沿うように振舞うのが正解』というように考えているのでしょう。でも、飛ばされたんだから適当にと開き直って、期待されたんだから頑張ろうというのは自分勝手な話で、そういう考え方こそかえって異動の意図をはずす原因になってしまいます。

人事異動の目的には、仕事量・生産性の調整や事業戦略の遂行といったことから、組織の活性化、人材の育成、個別の希望や事情への配慮まで様々なことがありますが、それらの底流に流れている最大の目的はイノベーションを起こすことだと言えます。
ある業務・職場で蓄積されたことと、別の業務・職場で培われたことを、人を動かして掛け合わすことによって新しい工夫や効果や成果を生み出そうというのが人事異動を行う一番の目的であり、経営が人事異動を行う理由です。

であるならば、異動者は異動先の人達と、そのノウハウやスキルや視点を対等で自然な関係で公開、融合させること。そして、異動の直接の理由など気にすることなく、イノベーションを起こすことに互いに集中せねばなりません。
それをきっかけに、先の職場や仕事に好影響を与え、自分のキャリアにとっても有意義な経験としていける人は、このように異動を捉えていることが多いと思います。また、そのような結果を得ることができたときには、経営者も人事も冥利に尽きるという気持ちになるものです。


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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

「高齢社会、高齢期のライフスタイル」と「組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革など」)をテーマとした講演を行っています。

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