民事再生型M&Aと事業承継型M&A

2010.01.18

経営・マネジメント

民事再生型M&Aと事業承継型M&A

清水 美帆
株式会社ビジネス・ブローカレージ・ジャパン 代表取締役

皆様には是非M&Aを戦略的に使って頂きたいとの思いから、TVで放映されていた民事再生型M&Aと事業承継型M&Aの各事例を簡単にまとめてみました。

少し前の事ですが、NHKで放送された「ETV特集 社長たちの決断」をDVDで見ました。これは下記のふたつの事例をもとに作ったドキュメンタリー映像です。

・民事再生型M&A
・事業承継型M&A

民事再生型M&Aのケースは、民事再生を申請し、債権カットなどを行い、会社事態は倒産させ、事業譲渡というM&Aスキームで、事業ノウハウや従業員を買い手となる譲受先で引き受けるというものです。買い手企業からの売買代金はすべて債権者への返済にあてられ、売り手社長が個人保証していた債務はそのまま社長個人へ残る為、社長自身も自己破産をしなくてはなりません。何を守って、何をあきらめなくてはいけないか。株主、役員、従業員、取引先、お客様にとって、どの道を選ぶのが、最善の策なのか社長は必至に考え、民事再生をし、M&Aで従業員をひとり残さず引き継いでくれる譲受企業を探すという選択を選びました。しかしながら、そう簡単に机上の空論では話は進みません。今回の企業の場合、バランスシート(BS)が改善されたとしても、PL上でも、利益がでていない状況。事業自体の抜本的改革が必要になります。原価構造の見直し、経費の削減、既存商品の見直しと撤退、新商品の開発 など買い手サイドではどうにか利益の出るしくみに転換できないかとシュミレーションを繰り返し、実行へと移していきます。

もうひとつのストーリーは、事業承継型M&Aは後継者がいない創業経営者が、戦略的に会社を売却し、ハッピーリタイアを果たすというドキュメンタリーです。売り手社長は人生75年と考え、65歳で会社を売却し(その時点で黒字経営)、これまで経営に人生をかけてきたから、これからは経営の心配をせずに、残りの10年、趣味を楽しみながら、奥様との時間を大切にされるそうです。買い手となる譲受企業は民事再生型M&Aの買い手企業と同じ企業です。今回のケースは黒字企業の買収なので、買ったらそれで安心かと思えば、決してそうではありません。買収することで売上と利益の拡大が描けるからといってそのままに放置していたら、企業は腐っていってしまいます。企業はナマモノです。M&Aでは買い手の経営手腕も問われます。それを大切に扱い、継続や成長させていける素質がないと買い手企業となるのは難しいのです。買い手企業の社長は売り手社長にはしばらくの間、顧問として残ってもらい、新商品の企画などを一緒に進めていきます。これまでは一切広告はやらずに顧客の口コミだけでPRを行うという姿勢でしたが新しい社長の経営では、広告も行い、新商品も次々と発表する体制に変えた所、過去にはない数字をたたき出し、更なる成長を続けているそうです。この事例からもわかるように、M&A成功の秘訣は、売却対象事業に魅力があるというのはもちろんの事ですが、買い手企業の社長の経営手腕も重要なポイントです。売り手企業にとっては大事な従業員と事業を受け渡す訳ですから、単にお金があるから良いという訳ではなく、社長の実績、ビジネスセンス、モラル感、社長同士の相性なども問われます。今回のふたつのケースでは優秀な社長が会社を引き継いでくれたので、売り手社長も従業員も取引先も皆が安心している事でしょう。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

清水 美帆

清水 美帆

株式会社ビジネス・ブローカレージ・ジャパン 代表取締役

JMAA認定M&Aアドバイザー(CMA)

フォロー フォローして清水 美帆の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。