「ふっかけた方が得」のアンカリング効果

2010.01.15

営業・マーケティング

「ふっかけた方が得」のアンカリング効果

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

近年注目を集めている 「行動経済学」 は、人間が必ずしも‘合理的’に判断したり、 行動したりできるわけではないことを 実験等を通じて検証してきました。

既に「行動経済学」についての書籍が
何冊も出版されていますのでご存知の方も
多いと思いますが、

「人間の意思決定や行動」

に関する様々な「効果」や「法則」が
発見されています。

さて、こうした効果の中で、
最もビジネス、というか商売に
活用されてきたのが

「アンカリング効果」

です。

これは、最初にある数字を示されると、
無意識にそれが基準(アンカー)となってしまい、
その後の判断が影響を受けてしまうというものです。

よく引用される実験としては、
以下のような質問に答えてもらうがあります。

---------------------------------------------

a)国連にアフリカ諸国が占める割合は、
   65%よりも高いか、それとも低いか?

   *「65」の数字はルーレットを回して出たもの。
    協力者によっては「10」になるように細工されていた。

b)国連にアフリカ諸国が占める割合は何パーセントか?

----------------------------------------------

a)の質問文には、

65%

という数字が含まれています。

これは、ルーレットを回して出ただけの、
なんら根拠のない数字です。

実験に協力した回答者も、
そのことがわかっています。

それにも関わらず、
ルーレットが「10」=10%となった場合に
アフリカ諸国の国連に占める割合を
推測した結果は、

平均25%

でした。

一方、ルーレットが「65」=65%で
あった場合には、

平均45%

という回答になったのです。

つまり、根拠があろうがなかろうが、
最初に示された数字が無意識に基準と
なってしまい、回答が影響を受けて
しまうわけです。

なお、数字を示さない
(つまりアンカリング効果のない)
b)の質問に対する答えは、

平均45%

でした。
(正解:国連に占めるアフリカ諸国の割合:23%)

興味深いのは、
最初に示される数字が

突拍子もないもの

であったとしても、
影響力を発揮するという点です。

例えば次のような質問。

・サンフランシスコの平均気温は、
 「摂氏292度」よりも高いか低いか。
 サンフランシスコの平均気温は何度くらいか?

摂氏292度なんて、
ありえない平均気温ですよね。

もちろん、
この質問を見せられた実験協力者も、
実際のサンフランシスコの平均気温が、
3桁(100度以上)になるはずはなく、
2桁の数字を推測しました。

それでもやはり、このありえない数字を
示された人の方が、そうでない人よりも
高い平均気温を回答したのだそうです。

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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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