業務手順書から業務を設計する

2009.12.23

経営・マネジメント

業務手順書から業務を設計する

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

今回は、弊社のサービス事例からの考察で、業務の手順書作成の機会を捉えて、あるべき業務を本当に設計しましょうというお話です。

最近、弊社が依頼された仕事の一つに、海外子会社向けの調達・購買業務手順書の作成がありました。特に、調達・購買システムを導入するという事ではなく、純粋に調達・購買業務の手順書のみを作成する仕事です。

最初のメールでの問い合わせを受けた時には、調達・購買管理の教科書は世にあまたあるので、J-SOX絡みなどの表面上の内部統制の帳尻合わせならば、それを参考に自分達で作れば済む話ではという印象を受けました。

実際に話を伺った所、J-SOXなどはまったく関係なく、新会社を作るにあたって、海外という事で自分達の目も届きにくく、実効性のある調達・購買の統制の仕組みをつくりたいが、社内に調達・購買を専門にしている人材がいないという事で、監査法人や弊社に打診しているとの事でした。

弊社からは、監査を通すための業務手順書はお役に立てないが、調達・購買のあるべき姿を実際の業務に反映するための手順書であれば、弊社の事業活動そのものというお話をさせて頂いた所、そうした事業運営が評価されたのか、このお客様の調達・購買業務手順書の作成を任せて頂く事となりました。

実効性のある手順書を作るとなると、確かに教科書のつまみ食いでは上手くいきません。教科書が説くエッセンスを理解した上で、業務のあるべき姿を想定し、それが実効性があるものかを確認していかなければなりません。そうして出来上がった業務のイメージを手順書にしていくという流れが必要です。それには、あるべき姿のビジョンと、それを現場に展開するクリエイティビティ、そして現場に展開した後の実際の業務をイメージできる想像力が不可欠です。監査や審査対応の時になかなかよい業務手順が生まれないのは、それらがビジョンやクリエイティビティ、想像力を抑制する方向で働くからです。

これは、システム設計の流れとまったく変わりませんが、システム設計の場合、設計の結果が実際のシステムという目に見える形になり、必要な手順の漏れや各手順の整合性の確認がしやすいため、きっちりと作られます。それに比べると、業務手順書は中途半端なものでも通ってしまいますが、あるべき姿をできる限りシンプルに実効性のある業務に落とし込むという設計思想は、業務手順書でも体現されるべきです。

今回のスコープは、手順書のページ数としては、各種申請書などのサンプルを含めても十数ページのシンプルなものですが、その間のディスカッションを通じて、お客様の調達・購買業務のマネジメントについての思想や、漏れていた観点、煩雑になっていた部分の発見、整理ができました。お客様の方でも、そこに今回の委託業務の価値を見出しておられたようです。

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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