群馬大のレアメタル回収技術を基にリサイクルビジネスを考える

2009.11.27

経営・マネジメント

群馬大のレアメタル回収技術を基にリサイクルビジネスを考える

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

群馬大学の研究グループが、レアメタルを非常に効率よく回収できる方法を開発したと発表しました。本稿では、この開発事例を基に、リサイクルビジネスならびに、その技術開発の方向性について考えます。

群馬大学の永井大介助教とらの研究グループが、レアメタル(希少金属)を従来のポリマーより非常に効率よく簡単に回収できる方法を開発したと発表しました。

同グループは、硫黄原資の持つ高いレアメタル吸着力に着目し、硫黄を含むポリマーを開発、通常ポリマーは金属を含む水溶液しないため、それを金属水溶液に溶解させる方法も合わせて開発しました。このポリマーを金属水溶液に加え、ポリマーが金属を回収後に沈殿、ろ過後、加熱処理などでポリマーを除く事で、非常に効率良く簡単にレアメタルを回収できるのが、この方法の特徴です。

例えば、携帯電話の基板に使われるパラジウムの回収実験では、1g当たり0・25gのパラジウムを1分弱で回収、この回収量は、パラジウム吸着材として現在市販されているものの5倍にあたります。

同グループは、この方法で、ポリマー1g当り、燃料電池に使われる白金で0.52g、金で0.53gの回収を確認できた事から、このポリマーをレアメタルを効率かつ簡単に回収する捕集材として、企業などと連携して2年程度での実用化を目指しています。

また、同グループでは、レアメタル、貴金属の回収の他にも、この方法が有害金属の回収や水浄化など、幅広い分野での応用を期待しています。(出所:ウェブ桐生タイムス 2009年11月14日:http://www.kiryutimes.co.jp/news/2009/1114/0911141.html

「日本は資源のない国」と良く言われる日本の中で、将来有望な資源と見られているのが、これまで作られた家電や自動車などの工業製品に含まれるレアメタル、いわゆる「都市鉱山」です。

この都市鉱山の活用で問題になるのが、回収コストです。今回の方法は、回収効率と簡便さから来る処理コストの両面から、回収コストの削減につながると思われます。回収コストをいかに低くするかが、リサイクルが継続するビジネスとして成立するか否かの大きな肝の一つとなります。

そのため、資源×回収率の向上、回収コストの削減は、日本国内でも数少ない成長市場として有望である事が見込まれ、様々な技術の開発が望まれる一方で、熾烈な競争が繰り広げられる事が予想されます。

また、世界に目を向ければ、市場が大きく広がる分野でありますので、競争を回避する選択肢も多くなると思われます。

競争に晒される研究者やサプライヤとしては大変かもしれませんが、技術を利用する立場としては、競争に晒される事でより良い技術が生まれ、回収率の向上、回収コストの削減が図られ、リサイクルの採算が成立するようになり、より多くの廃棄物が廃棄物でなく資源になる世界が来る事を望みます。

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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