ブランド(のれん)は時が経てば減るか:国際会計基準の無形資産

2009.08.22

経営・マネジメント

ブランド(のれん)は時が経てば減るか:国際会計基準の無形資産

野口 由美子

国際会計基準では無形固定資産について日本の会計基準とは異なる考え方を採用しています。今回はその特徴をを中小企業向け会計基準と対比させて紹介します。

本サイトへの投稿記事は
aegifの国際会計基準専門ブログ IFRS of the day(http://aegif.typepad.jp/ifrs/)より引用しております。

無形固定資産というとソフトウェアや商標権等の権利、のれん等があります。

無形というだけあって、目に見えないものなので、「物」として存在する他の資産より扱いはやっかいです。現在の日本の会計では無形固定資産の計上や償却等は税法の規定に従って処理している場合がほとんどだと思います。

国際会計基準では無形固定資産についてより実態に即した、という観点で違う処理を求めています。
特徴的な処理を見てみましょう。

①耐用年数のない無形固定資産がある
国際会計基準では無形資産を耐用年数が分かるものと分からないものに分けます。国際会計基準でのれんの償却を行なわないことは有名な論点ですが、これものれんの耐用年数がわからないので耐用年数のない無形固定資産と考えているからです。

②耐用年数や償却方法などを毎期見直さなくてはならない
これは有形固定資産でも同じことが要求されていますが、無形固定資産の処理が実態に即しているか毎期見直さなくてはなりません。日本基準よりも処理の合理性について説明が必要になります。

③開発費も無形固定資産として計上する場合がある
日本基準では研究開発費を原則費用処理としていますが、
国際会計基準では一定の要件を満たした開発費を資産計上します。

これらの取り扱いについて、中小企業向け国際会計基準はどのように定めているでしょうか。

①耐用年数のない無形固定資産はない
耐用年数を合理的に見積もるのは非常に面倒な作業です。そこで中小企業に対しては耐用年数が分からない無形固定資産は耐用年数を10年と推定して償却することを認めています。従って、のれんも10年で償却することができます。

②耐用年数や償却方法などを毎期見直さなくてもよい
減価償却の会計処理を毎期見直すのは非常に面倒な作業になると思います。
中小企業向け国際会計基準では、経済的実態が変化したという兆候がある時に見直すことが要求されているので、変化がなければこの煩雑な作業を省略することができます。

③開発費はすべて費用計上できる
開発費についてもいちいち要件を検討するのは大変な負担です。そこで資産計上の要件検討をしないで一律に費用処理することが認められています。

個人的にはのれんは時間とともに減価しないが減損の検討が必要、という国際会計基準の取り扱いが、中小企業向け国際会計基準ではのれんの償却を行うことになる違いが興味深いです。

このように国際会計基準では無形固定資産の会計処理は複雑になりますが、各企業がどのように対応していくか方針を立てなくてはなりません。
国際会計基準と中小企業向け国際会計基準の両方を参照して企業がグループとしてどのような実務を行なっていくか、検討していく必要があるでしょう。

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