『心』に響く理念を~mustからwillへ~

2009.06.23

組織・人材

『心』に響く理念を~mustからwillへ~

小倉 広

せっかく策定した理念。なぜだか浸透しない。 伝え方不足なのかな? 伝え方が下手なのかな? 理念が伝わらないのは『頭』で理解できないからではありません。 『心』に響いていないからなのです。mustからwillへの転換。理念経営に成功した企業の方針をご紹介。

「やはり、私たちの伝え方不足でしょう。もっと繰り返し伝えることが必要です」

「伝え方が下手なのかも…もっと噛み砕いてわかりやすく伝えるべきでは?」

ここは、企業理念完成の三ヶ月後に行われた振り返りミーティングの席。
私はオブザーバーとして会議に参加することになりました。

会議のテーマは『なぜ理念が浸透しないのか?』…意見を集約すると
『伝え方の量を増やす』「噛み砕いてわかりやすく説明する」の二つが解決策と
なりそうです。

会議も終盤に近づき、メンバーに安堵の色が漂い始めたその時です。
それまで一言も喋らなかった社長が声をあげました。

「では、こういうことだな。理念を君たちが語る場面を増やす。 なおかつ
 わかりやすく話す…それで、理念が浸透し、社員の行動が変わっていく、
 ということなんだな?」

うーん、と考え込むメンバーたち。リーダー格の部長が答えました。

「それだけでは足りないかもしれませんが…他に思いつきません」

苦笑する社長は、オグラさん教えてあげて下さいよ、と目配せします。

「ちょっとよろしいですか?」

私は理念浸透の真実を伝えることにしました。

理念が伝わらないのは『頭』で理解できないからではありません。
『心』に響いていないからなのです。つまり『やるべき』とわかっていても
『やりたい!』という情熱に繋がっていないのです。では、どうすれば心に響き、情熱的に『理念を実行したい!』と思えるようになるのでしょうか。

フェイス総研のクライアントで、理念経営に成功したある企業では、それを二つの方針で実行。大きな成果をあげました。

一つ目は、プロジェクト・メンバー自身が『模範を示す』行動を徹底すること。
経営理念で『お客様の満足』を謳ったのであれば、誰よりも熱狂的にお客様へ
奉仕する。
理念で『誠実』を謳ったのであれば、誰よりも約束守り、嘘をつかず、陰口を言わない…部下は理念の額縁ではなく、上司やプロジェクト・メンバーの言動を見るのです。

二つ目の方針は、理念浸透の伝道師たるプロジェクト・メンバーが、部下たち
から尊敬され、信頼されるような『何か』を実行し続けることです。

この会社のあるプロジェクト・メンバーは、管理職業務が終わってから、スーツを脱いで制服に着替え、現場スタッフを手伝うことにしました。

また、ある課長は、業務が終了した夜中にも関わらず、翌朝は一番に出社し、
早番スタッフに混じってお客様の満足のために仕事をし続けました。

彼らが取った行動は、理念に直接関わっていないかもしれません。
しかし彼らの熱意と思いは確実に部下たちに伝わった。
熱意を感じた部下たちは、上司が推進する経営理念を一つずつ信じ、
実行してみたい、と思うようになったのです。

理念が伝わらないのは、頭で理解できないからではない。それは心に響かないから。
そして部下の『心』を打つのは、理念の伝道師たる上司たちの言動そのものなのです。

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