『一徹理視』~3年ジョブローテーション再考

2009.06.22

組織・人材

『一徹理視』~3年ジョブローテーション再考

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

3年程度で仕事をぐるぐる経験させていくことが育成上、本当にいいことなのか。一つの仕事分野に10年超関わることで得られる深い世界もまた存在する。「一つを徹すれば、理(ことわり)が視えてくる」。

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手元にビジネス雑誌『THE 21』09年6月号(PHP研究所発行)がある。
今回は、この中のキッコーマン・茂木友三郎会長のインタビュー記事からヒントを得て、
ジョブローテーション制度を考える。

茂木会長のコメントを要点だけ抜き出すと、


毎年、新入社員に「いつでも会社を辞められる人間になれ」という言葉を贈る
いつでも辞められる、どこにいっても働けるぐらいの人材でないと、
社内で思い切ったことができない。
自分の意見もおっかなびっくりでしか言えない、また、
上から睨まれて、クビにされるのが困る
と思ってしまう人材に、会社に長くいてもらってもいいことはない。


要は、“スペシャリティー”をもて、ということ。
スペシャリティーとは、「社内でこの問題はあいつに任せれば安心だ」とか、
「この問題に関してはアイツにはかなわない」というようなレベルではない。
「業界の中で、キッコーマンのアイツはスゴイよ」とか、
「キッコーマンにはあいつがいるからウカウカできないぞ」といった
業界内で名前が轟(とどろ)くようなスペシャリティー。


(企業では3年ぐらいでジョブローテーションをさせるのが一般化している。
そんな中でスペシャリティーを磨くのは容易ではないが、との問いに・・・)

これはもうとんでもない話。
一つの仕事を3年しかやらないなんてナンセンス極まりない。
そもそも3年サイクルのローテーションは、エリート官僚のための制度だった。
官僚の中のトップ5%くらいの人間が、そうやっていろいろな仕事をかじって、
全体をみる経験をしていく。
企業に入ってくる多くの大卒者はエリートでもなんでもない。
そんな人材が、短期間でグルグル仕事を変わるなんてことは意味がない。
3年ぐらいではとてもスペシャリティーなんて身につかない。
その世界では、まだまだ下っ端にすぎない。


私の理想論としては、最低でも一つの仕事を10年間やる。それくらいの経験が大事。
30歳までに一つの仕事。
そして40歳までにもう一つの仕事。
その二つの仕事でスペシャリティーになれば、どこへいっても通用する人間になる。


(40歳までに二つの仕事しか知らないのでは世界が狭すぎないか、との問いに・・・)

そんなことはない。
スペシャリストになると、仕事のコツや勘どころがみえてくる。
それはどんな仕事にも応用が利く。
40歳以降は、それまでに培った自分なりの“仕事の仕方”を全部の仕事に応用していけば、
どんなジャンルの仕事もこなせる人間になる。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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