商社マン しんちゃん。 走る! (6)

2009.06.01

営業・マーケティング

商社マン しんちゃん。 走る! (6)

三宅 信一郎
株式会社BFCコンサルティング 代表取締役

~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。

第一章 田舎学生から激動の社会人生活へ

赤坂の夜の世界というのはある種特殊な世界である。

官庁、霞ヶ関などの役所、政府関係機関などが近隣に
あるため、日本の行く末などが語られる政治家御用達の
料亭が、ひっそりと裏通りにあったりする。 

かと思うと、ここは日本かと疑うばかりのハングル語や
中国語が飛び交う表通りがあったりし、多種多様化した
巨大繁華街である。 

アジア人、黒人、白人などの外国人、大物政治家、役人、
財界人、サラリーマン、任侠の世界の人、ちんぴらなど
ありとあらゆる世界に軸足を置く人間が夜な夜な
混沌とした闇の中でうまく融合しながらうごめいている
夜の世界。

 
「これが夜の赤坂や。 一見華やかやろ?」

< は、華やかっちゅうか・・・、夜やのにえらいまぶしいな >

繁華街といえば、北海道のススキノしか知らない宮田
だった。
ススキノは、同じ繁華街でも北海道らしくあっけらかんと
しており、赤坂から感じるどろどろした何かおどろおどろしい
ブラックホールのような不気味な雰囲気はなかった。

マイクがご馳走してくれた高級中華料理に舌鼓を打った
一行は、場所を変えて赤坂見附の交差点から程近くに
ある高級ホテルの最上階にあるバーに移り、ウイスキーの
水割りを注文し、赤くぼんやりとライトアップされた
東京タワーをビルの間から望み、眼下に赤坂の夜景を眺め
ながらお酒を楽しんでいた。

マイクが口を開いた。

「宮田君。 自分なー。マーケティングって言葉知っている?」

「はー。マーケティングですよね。広報とか宣伝とかのこと
ですよね。」

< マーケティングぐらい知ってるわいや。いくらなんでも  >

「まー、そや。 普通、日本の大企業には、マーケティング
本部とか、あるいはマーケティング部といった類の組織が
ようあるんやけど、大日本商事にはマーケティング組織っちゅう
もんがあれへんのや。自分、気ーついてたーー?」

「いえ・・・」

「うちに限らず他のいわゆる総合商社と呼ばれる会社には、
どこにもマーケティング組織なんかあれへん。 
なんでやと思う?」

宮田はそれまで気づかなかった。

< そういえば、社内電話帳を見回してみても、そんな
  部署名を見たことないな >

それに同期入社100人の連中の中で、マーケティングと
名前の付いた部署に配属になった人間が居るという話は
聞いいたことがなかった。

「そういえば、確かにないですね。 大事な機能だと
思うんのですが、なんでないんですか? ようわかりません」

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三宅 信一郎

株式会社BFCコンサルティング 代表取締役

事業力強化・新規事業開発・創業支援コンサルタント 自動認識基本技術者 (JAISA:(社)日本自動認識システム協会)認定

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