きちんとエコヒイキしていますか?

2009.05.27

組織・人材

きちんとエコヒイキしていますか?

小倉 広

人材育成、とりわけ後継者育成に頭を抱える経営者の方も多いはず。 「どうすれば期待通りの後継者が育つのだろう…」 オグラ流の後継者の育て方を紹介します。


「期待をかけて育てた部長が子分を引き連れ集団退職してしまった・・・」

ある経営トップが大きなため息と共に悩みを打ち明け始めました。

「その後『今度こそは』と若手を抜擢したが、今度は力不足で物足りない。人の悩みは永遠に尽きない」と。

人材育成、中でも後継者育成に悩みのない経営者はいません。ではどうすれば後継者が育つのでしょうか?
 私は必ずトップにこう尋ねます。

「きちんとエコヒイキしていますか?」

 アルバイトさんに作業を教える人材育成ならいざ知らず、後継者を育てる人材育成は生半可なものではありません。
それはいわば人間づくり。スキルを叩き込むだけでなく、人格を高める魂の闘いが必要です。
業務スキルさえあれば、誰でもそこそこ9割程度まで仕事を仕上げることができる。
しかし残りの1割をどれだけ詰めるかで、結果に致命的な差が生まれる。
億単位の賞金がかかる競馬レースでもトップと2位の差はわずか0.数秒。
後継者たる人材育成とは、その『致命的な差を生む0.数秒の努力をできる人材を育てる』ということなのです。 
トップは後継者候補を堂々とエコヒイキし、他者の数倍時間をかけて鍛える。
私がこれまで出会ってきた経営者の懐刀は、例外なくトップにエコヒイキをされていました。
 ここで誤解がないように申し添えておきます。
エコヒイキとは後継者を甘やかすことではありません。

むしろその逆。他者に求める数倍の高いレベルを求め皆の前で真剣に叱る。

周囲がむしろ彼を不憫に思うかも知れない程に高い要望を出す、ということです。
そしてその代わりきっちり時間をかけて教える。
後継者に他者の数倍の手間隙と愛をかけるのです。

かつて、不良の巣窟であったラグビー部を一躍全国トップのチームへと育て上げた伏見高校ラグビー部元名監督山口良治氏は、後の全日本監督ともなる名選手平尾誠二をキャプテンに抜擢しました。
監督が平尾にかけた時間は他メンバーの数十倍。毎朝平尾と共に練習メニューを決め、チームの課題を話し合い、自ら平尾の脚をマッサージし繰り返し話し合ったそうです。
そして平尾をエコヒイキした分、監督が彼に求めたのは「周囲からグウの音も出ない程、平尾自身が圧倒的にズバ抜けること」。
そして事実、平尾はその期待に見事に応えたのでした。

心理学の世界には有名なピグマリオン効果という実験があります。
ハーバード大学にてローゼンタール教授により行われたこの実験で、教師から期待され(無意識に)エコヒイキされた生徒はほぼ例外なくテスト結果が上昇した、といいます。
人を育てるのは「高い期待」と「高い要望」です。
後継者を他者と等しく平等に扱っていては、トップたるあなたの「特別な期待」が本人へ伝わらないのです。
このエコヒイキが見事に功を奏し、1人の後継者候補が育ったとしたら、その先は加速度的に人材が育つでしょう。
なぜならば、人は「上」からの刺激には慣れるものの「横」や「下」からの刺激には発奮せざるを得ないから。
役員のみが高いレベルの仕事をしていても、所詮それは「彼らは役員だから当たり前」。しかし、自分達と同じレベル、同じ階層の社員がズバ抜けて高い意識で仕事を始めたら、言い訳をすることはできない。
後継者候補という同じ目線の人材を放り込むことで、これまでとは格段に違う刺激が生まれ人材育成に拍車がかかるのです。

「将を射んとすればまず馬を射よ」

数千人の組織変革もたった一人の意識改革から始まるのです。

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