敢えて「さだまさし的なるもの」を考える。

2009.05.24

営業・マーケティング

敢えて「さだまさし的なるもの」を考える。

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

今月の全日空の機内音楽チャンネルでは、さだまさしがヘビーローテーションされている。出張の帰りに、「雨やどり」「朝刊」「案山子」を不覚にも聞いてしまった。そして、ソフトバンクのCMのさだまさしも気になるが、この時代「さだまさし的なるもの」が求められていると確信した。

昨今のみんなが知ってる「坂」を唄ったヒットソング言えば、福山雅治の「桜坂」だろう。とても良い楽曲だとは思うが、その歌詞には、あまり感銘するところがない。「Woo Yeah 夢は今も 夢のままで♪」・・・シンプルで、大づかみ・・・しかし、「桜坂」という地域性や物語への深度は浅い。言葉の選択が、最大公約数型でマスマーケティング的である。

しかし、さだまさしは、この類のポピュラリティーを良しとしない。
♪喰べかけの檸檬 聖橋から放る
 快速電車の赤い色が それとすれ違う
上記は、「檸檬」という歌詞の一部だが、お茶の水駅で総武線を日頃使う大人達にとっては、ピンポイントで堪らない。「精霊流し」「無縁坂」「縁切寺」「飛梅」・・・長崎や、太宰府などなど、地域限定=ドミナントで、濃い物語を想起させる。その場の、その空気を知るヒトにとってはたまらないシチュエーションが、歌詞に散りばめられている。マーケティング的に言うと、ドミナント戦略で、さらに、ダイレクトマーケティング的。非常に、心に深く届く率が高い=収益効率の良い歌ではないかと考える。

この歌詞の系譜は、現代で言うと「いきものがかり」に引き継がれ、若年層のこころをビッシと掴んでいる。デビュー曲SAKURAには、「小田急線の窓に、今年も桜が映る」という、さだまさし風の歌詞がある。教室や、街の情景の捉え方がダイレクトマーケティング的で、溢れ出てくる言葉を抑えきれない感じが共通している。「泣き笑いせつなポップ」が、いきものがかりのキャッチフレーズなので、さだまさしを表現するなら「泣き笑いせつなフォーク」ということになるのだろうか。

昨年発行の月刊「ダ・ヴィンチ」7月号の中で、小説「茨の木」についてのインタビューを受けて、さだまさし本人が「僕は、じつは、この世の人間はだれでも、9割8分は、邪悪な汚いもので満たされていると思っている」と答えているという。そして、「9割8分の邪悪な部分を描くのが得意な人もいるが、残りの2分の上澄みを描くのが好き」だと・・・。
ゆるーい性善説から立ち上がるのではなく、性悪説から見えてくる上澄みに正面から向かう。そして、地域限定で、、、シーン限定で、、、ひとつひとつピンポイントの物語を紡いで他人を説得していく。こういう「さだまさし的なるもの」こそ、現代社会の政治やマーケティングに必要な視点ではないかと考える。

ソフトバンクのCMで唄うさだまさしも、また、「ざたまさし的なるもの」である。CMソング「私は犬になりたい¥490」の歌詞を、ぜひ、全部読んでいただきたい。中央線の話も、小田急線の話もちゃんとある。「泣き笑いせつなフォーク」になっている。

デビュー35年を迎えているおっさんが、まだ、闘っている。それも、ケータイ文化の吹き荒れる中で、ちゃんとそこら見えている上澄みを描き続けている。ほんとに、頭が下がるっ。

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中村 修治

有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。 その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。

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