マネジャーのプレイヤー兼務は、成功だったのか。

2009.05.19

組織・人材

マネジャーのプレイヤー兼務は、成功だったのか。

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

スリム化とフラット化(管理部門を減らし、管理職の多くをプレイヤー兼務としたこと)によって、会社がどうなったのかを冷静に見なければなりません。

最近は、マネジャーといっても大体は自分でも現場や数字目標を持っているプレイングマネジャーになりました。管理部門や管理職など直接的には利益を生まない部分を減らそう(スリム化とフラット化)という、バブル崩壊後に進んだ組織の見直しによってすっかり管理職の姿も変わった訳ですが、管理職の多くをプレイヤー兼務とすることによって、どうなったのかを冷静に見なければなりません。つまり、①現場のプレイヤーを増やすことによって、利益が増えたのかどうか、②管理者を減らすことによって、どのような弊害があったのか、を検証する必要があります。

②について言えば、一つには、チームワークや組織としての力が衰えたことがあるでしょう。例えば人材の流動化や若年層の早期退職は、職業観の変化や情報入手が容易になったことが大きいとは思いますが、マネジャーがメンバーに目配りしたり、コミュニケーションをとったりする時間が減り、チーム力を上げるための工夫や仕掛けを考える余裕もなくなったことにも原因があるでしょう。

次に、メンバーが育ちにくくなったこと。一つ目とも関係しますが、しっかり見てやる時間がなければ、指導すべきポイントも分かりません。また、同じように現場を持っている訳ですから、「負けてはいけない」「自分が一番稼がなければ、示しがつかない」といった考えになりがちで、育成という発想が生まれにくくなります。

三つ目は、幹部人材が育って来にくいこと。企業が継続成長するためには、マネジャーの中から、更に成長を遂げて次代の経営を担う人が現れてくることが必要なわけですが、現場を持ち続けることによって、経営という視野・視点で考えることが難しくなっているように感じます。経営者は中間管理職に嘆いていることが多いものですが、それは役割の与え方に問題があるのかもしれません。

「プレイングマネジャー」は良くないということではなく、現場を持つ、数字を持つことは良いのですが、それが得意だったり、数字になるので分かりやすかったりして、どうしてもプレイヤーの役割に集中してしまいがちになるのが良くない訳です。少なくとも管理者・マネジャーとしての目標、ミッション、役割を明確に定め、そのためのスキルを身に付けさせないと上のようになってしまいます。もちろん①について、そもそもプレイヤーを増やしたことが業績に貢献したのかどうかについても、一般論でなく各企業で検証すべきテーマです。

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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

「高齢社会、高齢期のライフスタイル」と「組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革など」)をテーマとした講演を行っています。

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