『そして、誰も見なくなる』視聴率競争の本質的欠陥とは?

2009.03.22

ライフ・ソーシャル

『そして、誰も見なくなる』視聴率競争の本質的欠陥とは?

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

ライブドアに掲載されたニュースに、とても真っ当なコメントが届いた。そこに、テレビが展開している視聴率競争の本質的な欠陥が見えた。視聴者という大衆の罠が、そこに見いだせる。

元記事は、「ビデオリサーチの新技術導入は、テレビ業界の悪あがき?」で、届いたのは、こんなコメントだ。

『ごく一部の凡人の世帯の数字をさも国民全員の数字のように言うのは止めて頂きたい。紅白なんか誰も見ていません。全世帯に視聴率計を付けてからの話ですね』

このコメント自体は、視聴率を計測するビデオリサーチの機器が、ほんの一部の世帯にしかないことに言及しているだが・・・視聴率そのものの問題も言い当てている。

要するに、

どんな高視聴率番組も、
視聴率を50%を越えなければ
観ている側は、少数派なのである。

・・・と、いうことは・・・

視聴率を発表する度に、
見ていない=多数派は、
そんなもん見てないと思う。感じる。

よかれと思っているテレビの視聴率発表→ランキングは、
逆に、

そうじゃないんだよねぇぇぇと言う多数派を、
常に炙り出し、不満を抱えさせることになる。
多数派に、見えない喧嘩を売っているようなモノだ。

テレビは、マス媒体であるのに、
本来、多数派に対してのメディアであるのに、
その本分を忘れて少数派のために競争している。
この矛盾こそ、視聴率競争の本質的な欠陥である。

視聴率競争を通じて「いわゆるサイレントマジョリティ」を敵に回している。

常に少数派にまわる視聴者自身も、その視聴率の数字なんて、あまり関係ない。
中身さえあれば観る。その結果としての視聴率であるわけで、視聴率を上げるために、テレビを観ているヒトなどいない。

首相の支持率が20%を割れば解散かぁぁぁと迫るマスコミが、
自分たちの作る番組が20%の支持を受ければ大喜びをする。
それって、やっぱりおかくしないか?

首相の支持率20%以下を、国民の意見として報じるなら・・・
そのテレビ番組を観てない8割以上の世帯があることが国民の意見であると捉えるべきだ。

テレビが自ら、視聴率を公表することにより、その首を絞めていった。テレビ局と広告代理店と広告主だけの間に流通する指標であれば良かったのに、番組自体の優劣を決める指標=出世の指標にしたことが諸悪の根源だ。

サッカーには、オフサイドというルールがあり、そのルールを活用した戦術にオフサイドトラップというのがある。
味方の一番後ろにいる選手よりゴールラインに近い位置にいる敵の選手はオフサイドポジションとなり、この選手にはパスを送る事が出来ない。なので味方である一番後ろにいる選手が前に出てディフェンスラインを押し上げ、敵の選手がオフサイドポジションになる状況を作り出す戦術がオフサイド・トラップ。

視聴率20%と騒いでいるテレビ局を静観している80%の多数派が、ディフェンスラインを押し上げているのが、テレビ局の戦略が何をやってもうまくいかない理由ではないだろうか、視聴率競争によって炙り出された多数派のオフサイド・トラップに、テレビ局がまんまと引かかっている。こういう作戦は、多数派の自覚がないままに侵攻する。

テレビ局は、このオフサイド・トラップから抜け出せるのだろうか?
そのためには、マス媒体としての「公器」としてのルールを見直すしかないと考える。

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中村 修治

有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。 その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。

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