事業継続リスクが高まる「社員退職」時のマネジメントについて

2009.02.16

組織・人材

事業継続リスクが高まる「社員退職」時のマネジメントについて

荒川 大

2008年は「偽装問題」が取り上げられた1年でした。事業継続性を考える時、企業の不正が発覚することによって企業が倒産に追い込まれる事件を多く目にしてきました。内部告発が増えている今、リスク対策の必要性が高まっています。

再就職支援事業を提供している中で、時折問合せを受けるのが「社内の機密を知りすぎている社員に辞めてもらう時の注意点は?」というもの。
不正の大小には関係なく、社員のやる気や愛社精神によって隠れている法令違反が、社員の退職によって露見することに恐怖感を持つ企業は少なくありません。また、不正と言っても、不正を認め是正・訂正することで、働いている社員には関係なく、事業継続上も問題なく対処できることも多くあります。ここで問題としていることは、事業継続上のリスクとして考えられ、また情報漏洩リスクが最も高まるとされている「社員退職」時の会社の対応について考えておきたいと思います。

【機密情報の漏洩】
社内の機密情報は、社内にいる限り漏洩するリスクは低いものです。しかし、退職や解雇によって人材が社外へ流出した場合、文書の有無とは関係なく、重要な情報やノウハウが流出することがあります。
大手メーカーなどでは、ここ数年何回かのリストラが実施され、重要な開発データが社員の頭の中に入ったまま外部に流出したこともありますが、こればかりは阻止することができません。文書等の持ち出しがないよう、情報資産管理の徹底や、退職時の誓約書の準備が必要です。

【顧客情報や個人情報の漏洩】
退職時に次の会社で活かせるようにと情報資産を持ち出すケースは少なくありません。個人情報などは、持ち出した元社員が自宅PCにインストールしたPtoPソフトによってデータが流出した場合などに発覚することもあります。刑法上は、その持ち出した社員に罪を償わせることになりますが、企業が受けるダメージはそれ以上のものになりますので、顧客データ等へのアクセス管理は十分に把握しておく必要があります。

【競合他社への転職】
一般社員であれば、管理職であっても競合他社への転職は止めることが難しいのが現状です。職業選択の自由を妨げる誓約書は、そのものが無効とされますので、対応は慎重にしなければなりません。但し、取締役であれば、商法上での規制がかけられるので、弁護士や社会保険労務士の方にご相談下さい。

【内部告発やブログ等への発表】
2009年は、2008年同様に内部告発が増えると思われます。公益通報者保護法により、通報者(告発者)は保護しなければなりませんので、特に「解雇」でトラブルを抱えている場合には、できるだけ速やかに解決しなければなりません。ブログ等での発表については、匿名性を逆に利用した告発であることが多いので、サーバー管理会社への削除依頼等、適切なプロセスが必要となります。

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