ビデオリサーチの新技術導入は、テレビ業界の悪あがき?

2009.02.10

営業・マーケティング

ビデオリサーチの新技術導入は、テレビ業界の悪あがき?

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

テレビ視聴率調査の「ビデオリサーチ」は、これまで集計できなかった「録画による視聴率」を測定できる装置を開発したというニュースが先日流れた。 何故?今更?この時期に?素直に考えて・・・疑問なのである。

そのニュースは、下記のようなもの。
読売新聞2月5日配信
テレビ視聴率調査の「ビデオリサーチ」は、これまで集計できなかった「録画による視聴率」を測定できる装置を開発した。

番組放送時の視聴データしか測定できない現在の視聴率が、実態を反映していないという批判が多いだけに、視聴率そのものを根本的に見直す契機になりそうだ。

現在、テレビ地上波放送の視聴率は、ビデオリサーチが唯一の調査会社。同社は、全国の地域ごとに一定数の世帯を抽出、視聴率測定機器を各家庭のテレビに 設置し、視聴データをオンラインで集計している。しかし、測定されるのは放送時に視聴された番組だけで、録画後の視聴やチューナー内蔵パソコンなどによる 視聴は技術的に集計できなかった。

今回、同社が開発した新測定機器は、録画番組の視聴時にテレビから出る音声をデータベースと照合することで、どの番組を見たかを判定できる。チューナー 内蔵パソコンによるテレビ視聴を測定する装置も開発した。これらは同社が5、6日に東京都内で開くフォーラム「データビジョン2009」で正式に公表する。同社は、「この技術により、より正確な番組視聴実態の把握が可能になった。導入にはテレビ局や広告主企業など関係業界の意見の調整が必要。検討してもらいたい」としている。

録画した番組を再生したときの音声で照合し、その番組の正確な視聴率に加算しようということらしい。総視聴率も下がり続けて、テレビの凋落が騒がれる中・・・実は、録画視聴を加算すれば、たいした落ち込みではなく、媒体価値は変わらない=広告費の維持。そんなロジックを組み立てたいところだろうが、本当にそうなのか?

そもそも、録画した番組に入っているコマーシャルを律儀に観る人など希少な存在なのではないか。番組の視聴率が、録画による視聴を加算することによって上がるとしても、CMの効果が高まるとは考えにくい。さらに、「ハイそうですね」という広告主が居るわけもない。

念のため・・・ここで視聴率調査の基本知識とその誤差についてふれておきたい。
視聴率調査に使用するサンプルは、関東地区内だとたった600世帯。関東地方には、約1600万世帯が存在しており、その中から選ばれているのはたったの 600世帯で視聴率が測られています。
統計学的には、そのサンプル数で充分だと言われているが・・・当然、その数値には、誤差が含まれている。
では、その誤差は+-どれくらいなのか?
audience-rating.comから抜粋すると・・・
「統計学でこの誤差を計算するための式がちゃんと存在します。・誤差=+-2×ルート(視聴率(100- 視聴率)÷サンプル数)この式に視聴率20%、サンプル数600世帯を代入してみると・誤差=+-3.3%の答えが得られます。このことから、視聴率 20%と発表された番組の実際の視聴率は、95%の確率で16.7%~23.3%の範囲に入っていますよ、ということが言えるのです。なお、この誤差は視聴率50%のときが最大で、その時の誤差は+-4.1%です。」ということだ。

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中村 修治

有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。 その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。

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