京都花街の経営学(4)芸舞妓さんの評価システム

2008.07.04

ライフ・ソーシャル

京都花街の経営学(4)芸舞妓さんの評価システム

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

お茶屋で芸舞妓さんたちを呼び、 彼女たちの舞踏を鑑賞したり、小唄、長唄を楽しむことを 「お茶屋遊び」 と呼びますが、 そもそも費用はどのくらいかかるものでしょうか?

当然ながら、費用は、顧客が希望するサービスの内容に
よって大きく変動しますし、明確な価格表は存在しませんので、
一概に言えないのですが、

『京都 舞妓と芸妓の奥座敷』
(相原恭子著、文春新書)

によれば、

午後6時~8時の2時間、
舞妓1人、芸妓1人を呼んで夕食、飲み物込み

として、お客さん3人の場合で一人当たり48,000円、
5人になると同38,000円だそうです。

また、レストランなどでの食事後の2次会として、
午後9時ごろにお茶屋に行き、食事抜きで楽しむことも
できます。(「後口」と言います)

この場合は、

午後9時~11時の2時間、
舞妓1人、芸妓1人を呼んでおつまみ、飲み物込み

で、お客さん3人で一人当たり35,000円、
5人では25,000円となります。

以上はあくまで目安ということですし、
7年前の本に記載されているので、
直近では多少高くなっているかもしれません。

まあ、確かに「お茶屋遊び」は贅沢な娯楽ではありますが、
多人数で行けば、1人当たりの金額は目の玉が飛び出るほど・・・
というほどではありませんね。

さて、お茶遊びのメインキャストである
芸舞妓さんに対して支払われる代金のことを

「花代」

と呼びます。

「花代」は、

芸舞妓さんの拘束時間(移動時間含む)x 時間単価

で計算されます。

つまり、稼働時間が多くなればなるほど、
芸舞妓さんの1人あたりの売上げが増加するという
シンプルな仕組み。

実は、芸舞妓さんの最終的な評価は、
この花代の金額の大小に応じて行われています。

毎年、正月明け、芸舞妓さんたちが所属している
学校(女紅場)では始業式が行われます。

この始業式では、新年を祝う舞や邦楽が披露されることに
加えて、前年度の売上成績上位者が表彰されるのです。

この表彰は、

「売花奨励賞」

などと呼ばれているそうですが、
文字通り、前年度の花代合計金額に基づいて、
上位からのランキングが公表されます。

新人の舞妓さんから90歳のベテランの芸妓さんまで、
すべての芸舞妓さんが同じ俎上で競争するのです。

究極の「成果主義」と言えます。

花代の時間単価は、
京都花街の場合、新人もベテランも同額ですから、
上位をゲットするポイントは稼働時間です。

つまり、

「どれだけお座敷などに呼ばれたか」

ということが鍵であり、
これは、端的にはその芸舞妓さんの

「人気度」

に等しいと言えるわけです。

ただ、注意したいのは、ここでの「人気度」は、

どれだけ指名の入るひいきのお客さんがいるか

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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