成果主義の終焉。その後

 産業界で成果主義を見直す動きが広がっています。成果主義に替わる新しい人事考査制度を考えてみましょう。

 日本経済新聞6月6日朝刊によると、資生堂は営業担当の部長以下1000人の社員に対して今秋から、売上高による評価に代えて、顧客満足度で評価するように人事考課を改めます。

 同社はすでに2006年4月から約1万人の美容部員の売上ノルマを撤廃して来店客の満足度を重視する方針転換を行っています。これがある程度の成果があったとの判断から、売上ノルマの廃止範囲を美容部員を統括する営業担当者にも広げることとしました。

 今回の報道で、目先の売上より顧客満足度を重視する同社の姿勢がさらに鮮明になりました。

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 年功序列型から成果主義への移行は人件費削減効果はありました。しかし、短期的な売上目標を重視するあまり、組織のチームワークや顧客とのコミュニケーションを軽視する傾向が顕著になりました。その結果、売上や企業のブランドイメージ低下という副作用をもたらすこととなりました。

 成果主義の弊害を是正すべく、組織への貢献度や後輩育成を重視する人事考課制度を導入する企業が出てきました。

 小林製薬は4月から全社員1260人を対象に、後輩の指導や欠員者の業務のカバーなど組織目標の達成度を人事評価の中に盛り込みました。

 また、1990年代に日本企業の先陣を切って成果主義を導入した富士通は、従来の個人の成果に加え、所属する組織での貢献度も評価に加えました。

 日経朝刊紙面では他にも、4社の例が紹介されています。

 後輩育成や組織貢献といった測定困難な要素を加味しようというの各社の取り組みは大変興味深いものがあります。

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 日本における成果主義は、1990年代から年功序列型賃金制度に変わる制度として導入が相次ぎました。

 日本能率協会の調査(2005年)によると、主要企業の8割以上が成果主義を導入しています。しかし、経営者側の過半数が「成果主義が社員の意欲向上につながった」と回答したのに対し、社員側は2割にとどまり、労使間の受け止め方に温度差があることが明らかになりました。

 マスコミは成果主義のブームが去って、次のトレンドに関心が向かっているようです。新たにどんな制度がいいのか・・・企業の模索は今後もたびたび報道されることでしょう。

 ここで、新しい人事考課制度を考える前に、ブームの去った(?)成果主義について、3つの問題点に触れながら考察してみたいと思います。

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 2006年4月に、成果主義型から定性的評価を重視する人事評価制度に切り替えた三井物産の槍田社長は、日本経済新聞5月26日朝刊紙面で「稼ぐ社員がいい社員」という成果主義に行き過ぎがあったのではないかと語っています。

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